<まる見えリポート>三重県内でも異例の猛暑 熱中症疑い死者、最多9人

【水不足に伴う塩害の影響で白く変色した稲穂を指し示す小竹さん=明和町で】

全国的に異例の猛暑が続いている。台風12号通過の影響で一時は落ち着いたかに見えた暑さだが再び盛り返し、8月に入っても納まる気配は見られない。三重県内でも既に熱中症の疑いで統計史上過去最多となる9人の死者が出ており、水不足に伴う農作物への影響も懸念される。

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県消防保安課がまとめた暫定値によると、今年は5―7月の3カ月間で少なくとも1137人(前年同期比632人増)、7月だけでも1023人が熱中症の疑いで病院に運ばれた。3日現在の死者数は、確認されているだけでも9人に到達。現在の形で統計を始めた平成26年以降の年間平均死者数1人という数字を大幅に超えており、「近年では例を見ない状況」(同課担当者)という。

津地方気象台によると、県内12カ所の観測地点中2カ所で、年間を通じての観測史上最高気温を更新。桑名では8月4日に39・8度を観測した。また7月中の観測史上最高気温も6カ所で更新されたという。

名古屋地方気象台は7月30日、東海地方で8月4日から向こう1週間の平均気温が平年よりかなり高まる可能性のある「高温に関する異常天候早期警戒情報」を発表。県内でも35度以上の猛暑日が続くとみて、注意を呼び掛けている。

津地方気象台の野内修一防災管理官は今年の暑さの原因について、「勢力の強い上層のチベット高気圧と下層の太平洋高気圧の2つの高気圧が重なって張り出し、下降流による断熱圧縮で西日本を中心に高気温となっている」と説明。西日本を西進する異例の進路をとった台風12号にも影響を与えたとしている。

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津市久居明神町の三重中央医療センターでは、7月中旬の連休明けから高齢者を中心に熱中症とみられる頭痛や倦怠感、脱水症状を訴える搬送者が急増しているという。同センターの佐藤友昭救急診療部長(58)は、「昨年より一度に集中して搬送されて来る印象」とし、「高齢者の中には水分をとったかどうかを忘れてしまう人も多いので、自分や家族が見て分かるよう、寝るときは枕元に数本のペットボトルを置くなど工夫してほしい。何かおかしいと感じたら重篤になる前に早めに受診を」と、熱中症への対策を訴えている。

鈴鹿市稲生町の鈴鹿サーキットでは、遊園地内で実施している水掛けイベントの頻度を増やすなど、暑さ対策を進めているという。

桑名市長島町のナガシマスパーランド(桑名市長島町)でも利用客が並ぶ場所に遮光ネットや扇風機を設置したり、場内アナウンスで対策を呼び掛けるなど対応に追われている。場内スタッフにも、担当する持ち場を頻繁に入れ替えて暑い場所にとどまる時間を減らすなど対策をとっているとし、同企画宣伝部担当者は「これほど暑いと外出してもらう機会も減ってしまうのでは」と懸念する。

農作物への影響も懸念される。JA三重中央会企画調整課の担当者は「高温により稲に白未熟粒が増える可能性がある」と稲の高温障害を指摘する。

稲は通常、日中に光合成をすることで栄養素であるデンプンをため込むが、登熟期と呼ばれる成長段階で高温が続くと、十分な光合成ができなくなる。また夜間高温の日々が続くと呼吸作用で蓄えたデンプンを使い果たし、品質が低下した白未熟粒と呼ばれる未成熟のコメができるという。

同担当者は「稲が高温に負けないよう、間断灌水(田の水を満たした状態と乾した状態を数日おきにする)などの処置をとるよう呼び掛けている」と話す。

明和町八木戸の海岸付近で稲作を営む小竹行哉さん(48)の水田では、水不足により地下の海水が上昇して水田に入り込み、稲が枯れる塩害による被害が発生し始めているという。小竹さんは「用水路の水が不足する9月に発生することはあったが7月に塩害が発生したのは初めて。このまま高温や水不足が続くと品質低下や収量減少が心配」と不安を口にしていた。