2023年6月27日(火)

▼世界が息をのんだ半日間と言えようか。衝撃はあっという間に沈静化し、うたかただったか、ロシアのプーチン政権のボディーブローになるのかは見通せない民間軍事会社ワグネルの反乱である

▼ロシア南部ロストフ州の州都の軍事拠点を短時間に占拠して北上、モスクワへ200キロ地点まで迫って停止した。そのスピードにロシア軍のもろさが指摘されているほか、ワグネルの創始者プリゴジン氏はロシア国防省の上層部を痛烈に攻撃。北大西洋条約機構(NATO)の攻撃に備えるとするプーチン大統領のウクライナ侵攻の大義名分も虚偽だと公然と言い切った

▼傭兵2万5千人の多くが従ったとされる。沈静化後の正規軍との契約は不参加兵だけで、参加兵はあり得ないとロシア報道官は明言した。世界の軍隊の中で、旧日本軍の特異な存在について、昭和史研究家の保阪正康さんが話していた。危険な任務も、各兵隊の諾否を聞かずに命令する。特攻隊員についても志願兵を募るだけ。応じ兵には陰湿な制裁があり、選択はできなかったという

▼元埼玉県知事の畑和が一兵卒として加わった二・二六事件の思い出を書いていた。真夜中に起こされて出動を命じられ、わけが分からぬまま行軍して待機したら、正規軍と銃を構えて向き合っていたというのだ。ワグネル軍には、参加不参加の意思は尊重されていたのだろうか

▼個人の意思が無視されたまま物事が進んでいく。無視された個人もまた、表だった反論せず、黙認した形で遂行されていく。そんな仕組みは今日の政治、社会の中で随所にみられると保阪さんは言う。