文化振興条例案が法に抵触か、三重県議会事務局 県に聞き取り 職務権限の移管手続きなく

三重県議会に提出中の文化振興条例案が関係法令に抵触する恐れがあるとして、議会事務局が県当局への聞き取りを進めていることが20日、関係者への取材で分かった。文化に関する職務権限を県教委から知事に移管するための手続きを経ていないことが理由。県は「違法性はない」と主張しているが、県議会の判断次第では条例案の採決を持ち越す可能性もある。

関係者によると、文化振興条例案が抵触する可能性が浮上しているのは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)。同法では、教育や文化に関する職務権限は教育委員会にあると定めている。

一方、同法は文化の職務権限を知事に移管できるとの特例を設けている。移管する場合は、いわゆる「特例条例」の制定が必須。職務権限の移管に当たり、議会から教委への意見聴取も義務付けている。

県が提出した文化振興条例案は「知事は文化振興の基本計画を定める」などと明記し、県当局が文化の事務を担うと定めているが、特例条例は提出していない。同法に基づく県教委への意見聴取も実施されない見通し。

環境生活部は本紙の取材に「文化の職務権限は既に移管されているため、問題はない」と説明。各部局の所管分野を定めた部制条例に、同部が文化関連の事務を担うとの記述があることを根拠とする。

ただ、部制条例は知事の職務を所管する部局を記すことが目的で、職務権限の移管を定めた条文はない。同条例に文化の事務を初めて記した平成7年当時の検討状況も「詳細は分からない」(担当者)という。

議会事務局は文化振興条例案の提出後、同法に抵触する恐れを認識。適法性を調べているが、疑念は払拭されていない。部制条例も「文化振興条例案を正当化する根拠としては薄い」とみている。

県議会としては、条例案を原案通り採決する▽いったんは採決を見送り、県当局から特例条例案が提出されるのを待つ―などの対応が考えられるが、議会事務局は「今のところは何も話せない」としている。

文化振興条例案は文化の振興に向けた基本理念や県の責務、県民の役割などを明記。県が1日の本会議に提出した。県議会は23日に開く環境生活農林水産常任委員会での審査を経て、30日の本会議で採決する予定。