2023年6月4日(日)

▼質問するとAI(人工知能)が答える「チャットGPT」の利用が広がっている。AIは膨大なデータを無限に学習し、人間とは違い忘れない

▼「機械は、ほとんど無限の消化力をもっている」「機械は考えることはできるが、しかし問題をつくりだすことはできない」という説明が、安部公房のSF小説「第四間氷期」(昭和33年)に出てくる

▼小説ではチャットGPTからさらに進んだ予言機械が登場する。「事実から出発した、論理的結論」を話す。個人情報保護の規制もない

▼未来は「いまの何百倍もの海底火山がいっせいに噴火して、海水は一気に、毎年30メートル以上もの速度で増えはじめ、40年後には、千メートルをこえるだろう」という大変動に見舞われる。陸上生活は不可能になると見越し、水生人間に改造して生き延びようとする

▼えら呼吸の未来人間を受け入れられない主人公は「機械を、そんなに絶対視してもいいのかな?」とつぶやき、阻止に立ち上がると予言され、殺される

▼「つくった者が、つくりだされた者に裁かれる」の言葉で小説は終わり、現状に対して暗示的だ。