ランドセルの貸し出し提案 鈴鹿高専の学生が起業、SDGsをキーワードに 三重

【今後の事業活動などについて話し合うメンバーら=鈴鹿市白子町の鈴鹿高専で】

三重県鈴鹿市白子町の鈴鹿高専にこのほど、電子情報工学科4年生の6人が、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みをキーワードに、ランドセルを定額制で一定期間貸し出すサブスクリプション(サブスク)システムを軸とした会社「リーセル」を起業した。同高専生の起業は初めて。

春からの運用開始を目指し、学生らは「日本のランドセル文化を継承しつつ、現代にあった新しい使い方を提案したい」と意気込みを見せる。

起業メンバーは社長の川口和花奈さん(19)をはじめ、酒井皓晟さん(19)、今立朝斗さん(19)、川村碧葵さん(19)、棟田綾音さん(19)、黒川侑我さん(19)の6人。創造工学の授業の一環で、起業を目指すチームとしてことし4月から活動を始めた。

6人はインターネットを通じて、入学前に選んだランドセルに対して「色やデザイン、重さなどで後悔した」という声があることを知り、ジェンダーレスや資源の利活用などの観点から、ランドセルのサブスク事業に着目。

LGBTQの子どもやランドセルに悩みを持つ子ども、日本のランドセルに興味を持つ外国人などをターゲットに、一定のニーズがあるのではないかと考え、事業化を決めた。

起業に向け、同校と協働研究を進める自動車部品製造業のエイベックス(加藤丈典社長、本社・名古屋市)が、地域振興や次世代育成を目的に支援協力。11月11日付で新会社の登記が完了した。

6人は作業の効率化を図るため、2班に分かれて取り組みを進める。ビジネス班の川口さん、川村さん、酒井さんはイクシー執行役員の生駒健二さん(49)から、起業の手順やメリット、目的などの専門知識を学び、技術開発班の今立さん、黒川さん、棟田さんはウェブサイトのシステム構築をそれぞれ担当。これまでに、1カ月あたり約70時間を作業に充てたという。

川口社長は「自分たちの起業に対する姿勢をまとめた『M(ミッション)V(ビジョン)V(バリュー)モデル』はシンプルかつ伝わりやすさを念頭に、時間をかけて作った」と話し、技術開発班の3人は「学校で学んだ知識だけでは対応できず、一つずつ自分で調べてアプリケーションを作るのは大変だった」「パソコンでもスマホでも表示が見やすいように工夫した」などと振り返る。

外部の意見も参考にしようと、10月の高専祭などに訪れた中学生や保護者らを対象にアンケートを実施。今後、集まった約200人分の回答をデジタル分析し、具体的な貸出期間や料金体系などに反映させていく。

将来的には、レンタルサービスのカテゴリー増加や起業経験を発信する講演会などで、事業拡大も目指す。6人の卒業後は会社を学内の後輩に引き継いでいく計画という。

直接指導にあたった生駒執行役員は「これからは先が読めない時代。若い人材が起業でさまざまなアイデアを出していくことで、自分を高めるきっかけにつなげてもらいたい」と、今後の活躍に期待を込めた。