2022年4月2日(土)

▼退職に当たり「入庁当初、ずっと主事のままだと思っていた」という県の中山恵里子子ども・福祉部長のコメントを昨日この欄で書いた。「部長になるなんて想像も付きませんでした」と続くが、その中山部長が、退職者辞令交付式で代表を務めた。県庁生活の一巻の絵巻物ではある

▼「主事のまま」かはともかく、女性は係長・課長補佐級止まりが普通。昇任させたら、家事ができなくなると辞職した職員もいた。女性を取り巻く社会がそんな時代だった。中山部長は代表あいさつで「同期入庁の女性は数人だけで。制服、お茶くみ、ごみ当番は当然」。が「事務の環境も大きく変化」「中でも変化を遂げたのは職員の意識だった」

▼自身が一番、見もし、体験もしたことだろう。ごく小さなことを垣間見たことがある。制服は入庁当時、グレーの事務服で、変えるための女性の検討チームの一人が入庁五、六年目の中山部長だった。聞き取りを重ねてブレザー方式の候補を三案ほどまとめた。一年ほどかけただろうか

▼決定へと進める過程で、女性だけが制服というのはどうかなどの意見が出て制服新調は立ち消えに。しばらくして、今の形になった。制服を嫌い、制服を維持する二つの立場を経験したということだろう。「それぞれの局面で真摯に取り組んできたが、今後も困難がもたらされると考えざるを得ない」という言葉に、制服への思いもあったかどうか。振り返ると感慨深い

▼一見勝之知事は「多くの困難な仕事をこなし、粉骨砕身で働いた実績は尊い」。結果が県民にとって尊かったかどうかはまた別の話。