<まる見えリポート>県庁は人事の季節 来年度部局体制は現行維持へ

【三重県職員の退職予定者】

三重県庁は人事の季節を迎えた。昨年9月に、3期10年務めた鈴木英敬前知事の後釜として一見勝之知事が誕生し、県政は転換点を迎えた。政権が変われば組織も大幅に変更されるのが常だが、一見知事は就任してまだ4カ月余り。部局改正まで至らない見込みで、部局長ポストも維持される見通し。「一見カラー」が出される本格人事の着手は来年度以降に持ち越されそうだ。令和4年度の県幹部人事を展望する。(年齢は3月末時点)

部局長で60歳の定年を迎えるのは日沖正人危機管理統括監、加太竜一医療保健部長、中山恵里子子ども・福祉部長、岡村順子環境生活部長、辻日出夫地域連携部国体・全国障害者スポーツ大会局長、横田浩一同部南部地域活性化局長、真弓明光県土整備部理事、森靖洋出納局長、喜多正幸企業庁長の9人。

通常、部局改正する場合は県議会2月定例会に条例案を上程する必要があり、その前段の12月議会には素案を示す必要があるとされるが、今回その痕跡はなし。そのため、来年度も現行の部局制と部局長ポストは維持される可能性が高いと見られる。

とはいえ、焦点となるのは危機管理統括監。鈴木前知事が新たに設けたポストで、部長より格上の4役に位置づけられ、副知事の「待命ポスト」として長らく機能してきた。「危機管理」という時流をまとっているものの、平たくいえば知事の留守番役。権力交代となった場合、真っ先に消滅しそうなポストだ。

ただ、「海上保安庁では尖閣対応など国家の安全保障に関わる第一線の現場にいた。これまで県庁が考えてきた危機管理とは段違いの危機管理」(元幹部)意識があるとされる一見知事が、コロナ感染拡大が今なお収束しない現下の状況で、同ポストをすぐさまなくすのは考えにくい、との声も漏れ聞こえる。

一方で、来年度以降に部局改正が着手されるのは濃厚で、「危機管理のプロ」と目される一見知事のもとで危機管理分野も含めた大幅改編もあり得る。5年度人事は新たな組織で発令される見通しが高いため、4年度は大幅な異動を避け、退職者の穴埋め重視の小規模異動が予想される。

危機管理統括監の継続なら日沖氏が定年延長されるのではとの見方が浮上する。一方で、副知事待ちでもないのに都合1年の延長は日沖氏に酷、との意見もあり、野呂幸利防災対策部長(58)か兼務もあるか。前知事肝いりポストをどうさばくのか、注目される。

加太医療保健部長の後任は次長級の小倉康彦病院事業副庁長(58)の名前が上がる。ただ同ポストは昇格ポストでないため、部長級から横滑りで中尾洋一同部理事(59)が就き、中尾氏の後任に小倉氏との見方も強い。

中山子ども・福祉部長の後は児童相談センター所長や子育て支援課長、長寿介護課長を歴任してきた中村徳久同副部長(58)が有力か。

岡村環境生活部長の後には、中野敦子農林水産部副部長(57)の名前が上がる。中野氏は「女性登用を積極的に進める鈴木前知事の下で鍛えられた」(幹部)とされ、県教委事務局次長、戦略企画部企画課長、環境生活部ダイバーシティ社会推進課長などさまざまな部署を歴任。「政策能力は高い一方で少々とっつきにくい面もあったが、調整能力も身についてきた」(同)との声。

来期も存続見通しの国体局は、国体中止の影響で積み上がった残務処理や後始末を円滑にするため、後任には同局内部から冨永健太郎、西口勲両局次長らの登用が予想される。

南部局長は竹内康雄・地連部副部長(56)か、前南部局次長の下田二一出納局副局長(58)か。両氏はいずれも紀北町副町長の経験者で、南部事情に通じていると見られる。下田氏は出納局長にも名前が上がる。

真弓県土整備部理事の後釜は、技術系の佐竹元宏同副部長(57)が濃厚か。企業庁長には井爪宏明防災対策部副部長(58)、山本英樹県土整備部副部長(58)の名前が上がる。

鈴木前知事は新たに国から県土整備部長と雇用経済部長を迎え、それぞれ異動適齢期の2年(雇用部長は7月)となる。一見知事は国交省出身だけに、県土整備部長は引き続き国から迎える公算が大きいとの見方は強い。

一方、「年齢などを勘案すると、経産省は部長より次長や課長で派遣する方を好む」「国交省出身の知事は経産省とそりが合わない」(いずれも庁内)などの意見もあり、雇用部長は庁内登用に戻されるとの見方も。その場合は、前雇用副部長の野呂氏や同次長経験の増田行信廃棄物対策局長(58)の名前が浮上する。

ほかに部長級で横滑り異動の可能性があるのは山口武美地連部長(58)、小見山幸弘観光局長(57)か。次長級からの昇格候補として山本秀典戦略企画部副部長(57)、井端清二医療保健部副部長(58)らの名前が上がる。

鈴木前知事の人事は女性幹部の登用が積極的に進められ、底上げにつながった。一方で、定年延長が頻繁に行われるなどした結果、部局長の高齢化が進み、54―5歳といった若手の抜てきは少なくなった。

一見知事が作り上げる組織や人事はどのような姿を見せるのか。今のところ庁内評の一端は「鈴木前知事は正解、不正解が分かりやすく決断も早かった。そのためこちらも提案しやすかったが、一見知事はさっぱり分からない」(中堅職員)との声が上がる。権力者の空気を読むのに長けた庁内でも、知事の意向は測りかねているようだ。