<まる見えリポート>自民と立民、全区で激突へ 衆院選日程固まり本格化

【1カ月前は“共闘”していた与野党の各県連代表=津市羽所町で】

衆院選の日程が19日公示、31日投開票に固まり、三重県内でも各党の動きが本格化した。県内4小選挙区では自民党と立憲民主党がそれぞれ候補者を擁立し、全選挙区で激突する見通し。1カ月前に実施された知事選で相乗り候補を擁立し、“共闘”していた与野党が火花を散らしている。三重4区では、共産党の新人候補も立候補を予定し、野党共闘に向けた調整にも注目が集まる。

自民は現職2人が今期限りで引退する予定で、県内4小選挙区に新人3人と現職1人を擁立。前回の平成29年の衆院選と顔ぶれが大きく異なることを逆手に取り、「世代交代」を掲げて「全員議員バッチを付けること」を目標に選挙戦を展開する方針だ。

これに対し、立民は現職2人と元職1人、新人1人を立てており、三重4区を除いて前回無所属で臨んだ候補者らと同じ顔ぶれだ。前回は1区と4区で自民候補に敗れたことから、国民民主党や共産などとの野党共闘による候補者の一本化がカギとなる。

県内の全選挙区で激突する自民、立民両党だが、先月12日に投開票された知事選ではそろって一見勝之氏を推薦。告示日の第一声では、両党の県連代表が肩を並べて一見氏を応援していた。それが1カ月後には、互いの政策への批判を繰り広げることになる。

自民県連幹部は、この変わり身の早さについて「面白くない人はいるだろうが、国政選挙と地方選挙とは別だ」と説明する。立民県連幹部も「衆院選は政権を選択するための選挙。政権構想を掲げて戦うので知事選とは全く異なる」と主張する。

ただ、知事選での与野党相乗りで「立民のほうが影響はあるだろう。共産との話がこじれているようだ」と自民県連幹部は指摘。立民県連幹部は「中央政界で野党共闘の話し合いが進んでいる」と否定するが、共産県委員会からは不満の声もある。

知事選で与野党相乗り候補だった一見氏と戦ったのは共産が推薦した候補。知事選後、共産県委員会の幹部は「もし知事選で立民が自民と対決していたら、4区で共産候補を降ろしていたかもしれないが、これで可能性はなくなった」と言い切った。

4区は強固な保守地盤で、自民候補が優勢な選挙区。立民候補を支援する県議は「厳しい選挙区なので、共産票が少しでも欲しい」と窮状を訴える。「立憲と自民が組むとは何を考えているのかと言われる」と知事選での相乗りも尾を引いているという。

前回自民候補が勝利した1区でも野党共闘への期待は大きい。「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」が候補者を擁立する動きもあり、1区の立民候補を支援する県議は「1票でも多く積まなければならない」と危機感を強めている。

一方で、自民側にも不安材料はある。岸田文雄首相就任後の世論調査は厳しい結果となり、菅義偉政権の終盤よりは改善したものの、支持率が予想を下回る低さ。2区で自民候補を支援する県議は「岸田総理になっても大して良い影響がみられない」とこぼす。

自民側が長年、辛酸をなめてきた3区に至っては知事選での相乗りや岸田首相の支持率の低さに関係なく、自民候補には厳しい情勢。「我々は大きな象の上にちょこんと乗っているだけ。非常に厳しい選挙区で、立ち向かっていくしかない」(自民県連幹部)。

自民県連は総裁選で期待されたほどの盛り上がりに欠け、各候補には岸田首相の支持率に頼らない自力での浮上が求められている。

対する立民県連は国民県連との関係性も良好とは言い難い。国民県連は県内の立民候補4人を推薦せず「支持」する形にとどめている。「きのうの敵はきょうの友」というが、果たして県内で立民は国民や共産と「友」になれるか。