<まる見えリポート>志摩市長選展望 三つどもえの見通し

任期満了(10月30日)に伴う三重県の志摩市長選が同11日告示、18日投開票される。再選を目指す現職の竹内千尋氏(61)=阿児町神明=に対し、元職の大口秀和氏(69)=志摩町和具=、元市議で新人の橋爪政吉氏(45)=大王町波切=が立候補を表明しており、3つどもえの選挙戦の見通しとなっている。

市議会9月定例会の最終日に当たる先月25日、一部の市議から議会解散決議案が提出された。地方公共団体の議会の解散に関する特例法に基づく解散条件でもある議員定数の4分の3以上の出席は満たしたものの、5分の4以上の同意は得られず、当時の定数19のうち賛成13、反対6で議案は否決された。

議案提出の背景には、大きく2つの理由があった。1つは合併による新市誕生に伴う在任特例制度の名残で市長と市議の任期が1年1カ月ずれていることに対し、同時選挙とすることで経費や市民負担の軽減を図ること。そしてもう1つが、これまでの市長選で落選した候補者が翌年の市議選を出直しの場として利用している現状への批判だった。

旧5町の合併に伴い新市が誕生した平成16年以来、同市では竹内、大口両氏による「二大巨頭」時代が続いている。初代市長を務めた竹内氏の後に大口氏が2期務め、竹内氏が再選を果たしたのが前回選挙。それぞれ落選後は市議に転身していることが批判の対象となっているとみられる。過去の戦績は両者共に「2勝2敗」で引き分けている。

3選を目指す竹内氏は、出身地で町長も務めた経緯から、旧5町では最大規模となる約1万世帯を抱える旧阿児町を支持基盤に持つとみられる。新型コロナウイルスの感染拡大に対する経済支援策や、太平洋・島サミット誘致など今期4年間の実績を前面に押し出し、自民党の推薦も受けながら支持層の拡大を図る。

対する前市長の大口氏は、市長時代に手がけた「里海構想」の実現を強調し、観光や経済戦略の見直しを公約に掲げて返り咲きを狙う。竹内氏同様、出身地で町長経験もある旧志摩町を拠点に見据えているとみられ、「組織だった体制ではなく少数精鋭」で支持基盤を広げていく方針としている。

こうした両氏の争いに異論を唱えたのが橋爪氏。「閉塞感のあるこれまでの16年間を変える」として、教育や産業面の変革や、価値観の創出などを主張して初当選を目指す。旧大王町長を務めた橋爪政勝氏を父に持つ経緯から、同町からの支持を基盤に、比較的若い世代に向けて支援を呼びかけていくとみられる。

大口、橋爪両氏が出馬に伴い議員辞職を選択したことで、市議の補欠選挙も選挙戦と同日程で開催される。改選数2に対して3陣営が選挙戦に向けた準備を進めているが、このうち2陣営は市長選の立候補者との関係も深いことから、様々な噂が飛び交っている。

コロナ禍では県内で初めて実施される首長選挙という点でも注目が集まる中、懸念材料もある。志摩青年会議所主催で5日夜、市長選への候補者を集めた公開討論会がYouTubeや松阪ケーブルテレビでの配信を通じて開催される予定だったが、前日の4日になって急遽中止が決定した。

3氏のうち2氏が「コロナへの懸念」などを理由に出席を辞退したことなどが理由とみられるが、主催者側は現時点で詳細を明らかにしていない。担当者は「市民が直接政策を聞ける場。3密を避けるように開催を予定していたが非常に残念」と話している。