2020年6月9日(火)

▼「豚コレラ(CSF)感染の野生イノシシの捕獲が、2月20日の6頭を最後に途絶えた」とこの欄で書いたのは5月11日。実は3月も過去最高。4月は3倍の49頭が捕獲されていた(本紙『まる見えリポート』)。「新型コロナウイルス感染拡大で、イノシシも気を遣ったか」とも書いたが、そんなことがあるはずもなかった

▼津市美杉村で確認の報道は5月末だったか。伊賀地域でも見つかり、松阪は指呼の距離。昨年7月に県内で初めて養豚場で感染豚が発生する直前の北勢地域で相次いで感染イノシシが発見されたころとは緊張感では及びもしないが、深刻さは上回っているようだ

▼事態を重く見た県は4―6月、伊賀、名張、津の3市を追加してワクチン散布の計画だったが、緊急事態宣言で見送られた。作業には県外を含むさまざまな業者の協力が必要で「不要不急の移動を避ける」ため実施できなかった。「不要不急」とは何か。改めて考えさせられる

▼おかげで4月は急増。5月も3月の倍だが、県のCSF対策プロジェクトチームは「4月ができなかったから感染個体が増えたとは考えづらい」。同チームが存続していたことは喜ばしいが、ウイルス感染の威力と複雑さが骨にしみた今、そう断じていいかは素直に同意できない

▼人とイノシシのウイルスとの2方面の戦いと本紙は書いたが、新型コロナは野生動物のウイルスが変異したとされ、かつて鳥インフルエンザも、ヒトへの変異で、日本中を恐怖に陥れた

▼新型コロナと豚コレラの対策組織をどうするかも「新しい行政様式」の課題である。