<まる見えリポート>新たな地域活性化を模索 伊勢小俣商工会青年部の挑戦

【キャッシュレス決済の勉強会=伊勢市小俣町本町の伊勢小俣町商工会で】

三重県の旧小俣町を中心に活動する伊勢市の伊勢小俣町商工会青年部(上田澄人部長)が意欲的な取り組みに挑戦している。資金集めでは補助金だけでなく、クラウドファンディングでの募集を導入。青年部が手がけるまつりの屋台でQRコード決済もできるようにした。将来的には地域通貨の発行も視野に入れる。背景にあるのは、地域経済の疲弊や国、地方の財政難だ。行政やその補助金に代表される従来型の地域振興策だけでなく、自らの手で新たな形を模索し、地域活性化を目指す。

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青年部では数年前から、キャッシュレスや地域通貨の勉強会を開催。実践の一つとして、先月24日の「おばたまつり」の屋台で、現金だけでなくQRコード決済「PayPay」も使えるようにした。売り上げ全体の2%ほどだったが、若者らが利用し、一定の手応えはあった。同決済は今後利用の増加が見込まれる分野でもあり、引き続き決済サービスの種類を増やすなど対応は続けるという。

国内のキャッシュレス決済は現在、2割とされる。10月の消費増税も踏まえ、政府はこの10年間で4割に引き上げることを目指し、さまざまな施策を打ち出している。青年部が着目してきたキャッシュレス化はまさに、旬の時期を迎えている。

一方で、中小企業の多い地方経済界では、手数料など一定の負担もあり、導入がなかなか進まない状況がある。商工会の多くも中小規模の事業者や店舗が構成員だ。

しかし、「地方は現金しか使えない店が多い」。世間一般のそんな固定概念を打ち破っていきたいと考える。まつりでのQRコード決済導入もその一手だ。上田部長は「消費者のニーズに応え、地域経済を変えていくには、地方こそキャッシュレス決済が必要」と強調し、取り組みを推進させる考えだ。

地域経済の先行き不透明感、国と地方の財政難で、いつまでも補助金やそれに伴う地域振興策を待つだけでは立ちゆかなくなる。ここ数年、そんな危機感が上田部長ら若手経営者の間でじわりと広がっていった。地域活性化のアイデアを自分たちも模索していきたいと勉強会を開始。キャッシュレス以外にも、地域経済を守り、支える観点から有効だとして、ブロックチェーン技術を活用した地域通貨の発行も検討する。

「オープン」にもこだわる。地域のコミュニティが先細る中で、団体や行政、地域の垣根を取り払い、情報共有することでさらなるアイデアや交流が生まれると確信し、会員以外も勉強会などに参加できるようにした。

青年部の取り組みに、本体の商工会も歓迎する。橋本一喜会長は「ずっと同じことばかりしていてはだめだ。若い人たちのチャレンジや頑張りを応援したい」とする。

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青年部がもう一つ、初めて手がけるのがクラウドファンディング。第1号となるのが、女子キックボクシングミネルヴァ日本ピン級2位の原谷彩香さんへの支援だ。原谷さんは県立久居高校の3年生。伊勢市小俣町のキックボクシングジム「健心塾」に所属し、昨年4月に「Ayaka」としてプロデビューを果たした。

そのAyakaさんを「世界王者に」と応援するプロジェクトとして、卒業後にキックボクシングの本場、タイへ2週間、武者修行に行くための資金をクラウドファンディングで募集することにした。

通常、商工会がこのような応援をする場合、補助金を模索したり、商工会や地域内の個人的なつてを頼り、カンパや寄付金を集めたりするのが一般的だが、金銭面を含め支援には限界がある。そこで目をつけたのがネットを通じ、共感した人などから幅広く資金を募ることができるクラウドファンディングだ。

青年部に所属し、Ayakaさんを指導する健心塾の稲垣喜大塾長はクラウドファンディングの利点について、資金調達だけでなく、広くアピールできる良さも挙げる。「小俣のような小さな町でプロとして活動するのは正直大変。地域をはじめたくさんの人に応援してもらい、Ayakaが世界の頂点に立つことで、若い人や子どもたちに夢を与えられるのでは」と語る。

青年部の挑戦に「終わりはない」と上田部長。「私たちは商売人なので、本来はチャレンジすることが得意なはず」と語り、「一番の失敗は挑戦しないこと。挑戦して失敗しても、それは成功となる。だからチャレンジし続けたい」と話す。