2019年7月28日(日)

▼「再生可能エネルギーは必要だと認識しているが、自然を犠牲にしたり、住民が不安なまま進められたりすべきではないと思っている」と、布引山地に計画する風力発電計画に反対する亀山市の住民団体「加太の自然を守る会」に、県の担当者が言った

▼見識ある発言だ。行政として見事なバランス感覚であることに異論はあるまい。問題は、計画の当初に、どうしてこうした見方や発言がなかったかだ。行け行けで民間企業をあおり、行き詰まるとたちまち慎重姿勢へ手のひらを返す。いつもの手口を見る思いはする

▼鈴木県政が自然エネルギーに前のめりに突っ走ってきたことは否定できない。誕生初の平成23年の記者会見で、鈴木英敬知事は太陽光、風力発電など自然エネの積極的展開を大いにぶち上げた。翌年、布引山地で問題になっている民間会社に室生赤目青山国定公園内では異例の40基という大量開発計画を承認。大型計画を誇った

▼風力発電推進県だと、業者が続々参入したのも当然。数々の問題をはらんで同社が羽根の落下事故を起こしたのは稼働翌年である。現在91基。さらに40基を計画し、ようやく住民の反発が本格化した。計画を前倒しで達成し、さらに拡大計画を立案した太陽光も、身近な空間に急激に侵食する施設に驚いた住民の反発が激しくなっている

▼フェロシルト事件同様、四日市公害の教訓はまたも生きなかった。「再生可能エネルギーは必要だと認識しているが、自然を犠牲にしたり、住民が不安なまま進められるべきではない」―繰り返すが事業開始前にこうありたい。