2019年7月26日(金)

▼「六日の菖蒲(ショウブ)十日の菊」という。5月5日の端午の節句に使われるショウブや9月9日の重陽の節句用の菊が一日遅れで到着しても間に合わない、役に立たないことのたとえ。一日遅れで豚コレラ感染養豚場での殺処分に着手した県に重なる

▼一日遅れて「豚コレラ対策本部」の本部長に就いた鈴木英敬知事は陸上自衛隊に出動要請し、防疫や風評被害に全庁挙げて取り組むことを指示した。その厳しい表情を見れば見るほど間が抜けて映るのは、対策の一日遅れというだけではない

▼県が同本部を設置したのは2月6日。愛知県の感染養豚場から入荷した豚82頭を検査し、すべて陰性と判明した直後だ。同月末に飼育豚へのワクチン投与を国に要請。県内養豚場が監視対象から外れてからも、感染イノシシの県境接近とともにワクチン餌の検討や消石灰を配布し、6月に同イノシシの県内発見でワクチンの先行散布を実施した

▼先手を打つつもりで早期の防疫に努めてきて最後の最後に、国の判断で「一日遅れ」となったのだ。「大変残念」という知事の発言も、この経緯を踏まえた思いがほとばしり出たのに違いない

▼米国の牛海綿状脳症(BSE)感染後の輸入再開や、遺伝子組み換え作物の表示問題など、国の対応は政治的不透明さがつきまとう。拙速を優先すべき対策に待ったをかけた国の指示にもその疑いは消えない

▼知事は交通規制への協力を呼びかけた。宮崎県での口蹄疫は、幹線道路の交通規制遅れが感染拡大につながったと言われた。一日遅れが大事に至らぬことを願わずにいられない。