2019年7月25日(木)

▼いなべ市内の養豚場で豚コレラの陽性反応が出て、県は殺処分の準備をして待ち構えたら、国が留保を伝えてきて、待機させた県職員を撤収させた。国の動向を見誤ったか、こうなることを承知で処分体制を取ったか

▼最初に発生した岐阜県の対応を国は厳しく非難したが、飼育豚へのワクチン投与をためらう知事の判断に特に指示はなかった。感染イノシシがじりっ、じりっと県境に接近して、鈴木英敬知事が予防のためのワクチン投与を求めてもいい返事はなかった

▼国と県の認識が違うのか、国の立場を知った上であえて要求したか。国がワクチン投与をためらうのは国際的に「洗浄国」でなくなり、輸出に大打撃を与えるからだ。いったん禁輸対象にされると、撤廃は各国別となり、各国駐在大使の最重要課題となって膨大なエネルギーが費やされる。農産物輸出を掲げる安倍政権にとっても出鼻をくじかれることになる

▼県はイノシシ向けワクチン入り餌の埋設を国に要望し、飼育豚についても再三要請したが、国はイノシシ向けに認めただけだった。国際的立場か養豚農家保護か、県は苦しい立場に立たされることになる。県への殺処分留保通知が国策のためか、典型的な症状が見られないためか、養豚農家、県民が迷わざるをえないのは不幸である

▼牛海綿状脳症(BSE)にしろ口蹄疫にしろ、鳥インフルエンザにしろ、原因から感染経路を含めていまひとつはっきりしないまま幕切れにされてきた。国民、県民の食の文化を守るのか、後処理の面倒を避けたいのかがはっきりしないことが、不信を募らせる。