2019年7月14日(日)

▼仕事柄選挙演説の会場はそこそこ見た。いずれも忘却のかなただが、一つ鮮明なのが平成元年参院選での中村喜四郎氏の演説。四日市市で開かれた自民党の決起大会で、腹の底からわき出るように「選挙は厳しいほどおもしろい」。その後の同氏を物語るようでもある

▼与野党ところを変えて来県した中村衆院議員は「自民党にたたかれるほど、闘志が燃える」。健在。そして「国民をなめている政治に鉄槌を」。かつてのように会場を沸かせたか。「相手候補を攻撃することが一番票になる」と言ったのはニクソン元米国大統領の選挙参謀で、選挙戦術の古典という

▼選挙上手で知られる安倍晋三首相は、確かに攻撃型だ。街頭演説で「こんな人たちに負けるわけにいかない」と言ったのは先の衆院選。党大会では「悪夢のような民主党政権」。今回も、改憲審議に応じない候補者か、責任を果たす私たちか

▼自衛隊を違憲とする共産党が応援していると、野合批判も。お友達の甘利明党選対委員長も自民候補出陣式で「共産党が後ろ盾になっている候補者か、自公政権で安定多数を取る(候補者を)送るのか」。旧ソ連が怖い仮想敵国だった55年体制下では社会主義か、自由主義かが自民党の決まり文句だった

▼旧ソ連消滅後はその印象を引き継ぐ共産党が代役か。思えば60有余年、二者択一を国民に迫り続けてきた。マンネリだが、分かりやすいと言えば水戸黄門の印籠にも匹敵しよう。国民性を考えると〝偉大なる〟という形容詞をつけてもいいマンネリだろう。人のいい有権者が破顔して留飲を下げそうである。