2018年12月12日(水)

▼永田町の常識は世間の非常識、という。霞が関の常識もまた―。官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)の混乱は、民間出身の取締役9人全員の辞任劇へと発展した

▼「経済産業省による信頼関係の毀損行為が根本的な理由」と会見した田中正明社長。三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長で、買収した米銀のトップを務め、世界の金融市場で活躍した国際派というが、日本の官僚に足をすくわれるとは思いもしなかったか

▼官庁の中の官庁と言われる財務省のナンバーワンとツーがどうして辞職を迫られたかは記憶に新しい。経産省官房長が文書で提案した約束を破ることなど驚くほどのことでもない。世耕弘成経産相は「政府内で確定していないことを示した失態はおわびするしかない」

▼報酬については触れずに就任を承諾させればよかったということか。口約束だけだったら何とでも言い抜けられたにということか。承諾させるのが第一の目的ならそのために手段を選ばないのが官僚である。文書で示そうが何だろうが、立場がまずくなれば何が何でも破るのも、官僚である

▼処分場に悩む市町を助けるのも県の役目と所管違いのRDF(ごみ固形燃料)発電事業に乗り出し、爆発事故や誤算続きの事業見通しで早々に幕引きを画策した県もその意味では変わりない。事業参加市町へ「新たな廃棄物処理体制への移行を支援する補助金」を交付する

▼施策の失敗を覆い隠すためなら予算を湯水にように使うのは珍しくない。田中社長も、水面下で償いの代替案を求めたら事態は違ってきたかもしれない。