2018年8月24日(金)

▼自宅で転倒して骨折。入院した廣田恵子県教育長に対し、鈴木英敬知事が「幹部だから注意してほしい」。自覚を促したといえようが、本人にとっては泣きっ面に蜂の気がしなくもない。ベッドに顔を突っ伏してはいないか

▼知事は成人としてもっとも体力、気力が充実しているとされる44歳。公園の芝生と歩道を分かつ鎖の仕切りをひょいと跳び越えようとして足を引っかけてつんのめったり、1メートルほどの低い塀から飛び降りてよろけたり、足への衝撃でうずくまる経験などないに違いない

▼県幹部ならずとも、高齢者の転倒は寝たきりの契機になるとして注意が呼びかけられている。高齢者ばかりではない。この春先の雪で足を取られて報道機関の支局長が足首を骨折し長く松葉づえでの歩行を強いられていた。駐車場の段差や車止めにつまずいて手を突いた拍子に手首を骨折などの話はしばしば見たり聞いたりする。旧久居市の公共施設で転倒が頻発するフロアがあることが話題になってもいた

▼厚生労働省の人口動態統計「死因別死亡者数の推移」では、転倒・転落死が平成28年で約8千人。うち同一平面上でつまずくなどした転倒が約5800人で10年ほど前から交通事故死をはるかに上回る。小さな段差やくぼみ、スロープ、体力の衰えを認識せず昔と同じ動作をしてしまう―などが原因

▼「あがらない年金こづかいつま先が」(静岡県・石川芳裕)は日本転倒予防学会選の平成25年転倒予防川柳大賞作品。漠然とした注意というより具体的装備で、また健康寿命との関連で考えていかねばならない。