2018年8月25日(土)

▼平成12年に設立した全国犯罪被害者の会の活動が犯罪被害者に対するさまざまな法、制度を実現させた。犯罪被害者等基本法成立は同16年。当初国は「支援基本法」の名称を予定したが、「被害者の会」の反対で「支援」の2文字が外れた

▼「支援の対象としてではなく、犯罪被害者の権利として法を制定すべき」という主張である。結果、同法第3条には「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」と明記された

▼「被害者の会」は、逆恨みで妻を殺害されて当事者になった岡村勲弁護士が、司法制度の中で被害者がカヤの外に置かれている現状を痛感し政策集団として旗揚げした。陳情や要請ではらちが開かないと、制度案を自らで起案し、小泉純一郎首相に直訴して「推定無罪が原則」の司法の常識に風穴を開けた

▼専門家でもないただの犯罪被害者の要望で成立した条例が、すべて名称を「犯罪被害者等支援条例」と「支援」の文字が入っていることと同列には論じられないが、行政と被害者との基本的なスタンスを感じさせなくもない

▼民事訴訟の負担を軽減する国の損害賠償命令制度は回収までの責任は負わないし、朝日町事件の遺族が起こした両親相手の訴訟も対象外。そんな溝をどう埋めるかが条例の役割だが、三重県の支援条例案はどうか

▼独自という「見舞金」の名称が、救済や権利の保障というより慰めや思いやりを連想させる。「県として犯罪の被害者に寄り添う姿勢を示すため」の条例だとも。県ファーストと言うのではあるまいが。