-やりがいある職場環境を 父から思い引き継ぐ- 青果仲卸業「マルユー」社長 榊原淳司さん

【「手狭になったカット工場を市場内に増設したい」と話す榊原さん=四日市市河原田町で】

四日市市河原田町の北勢地方卸売市場内に本社を置く青果仲卸業「マルユー」は、父勇さん(65)が平成2年に創業した。早朝に仕入れた青果物を大手給食会社や地元スーパー、飲食店、レジャー施設などへの出荷と、市場に隣接するカット事業部で、近年需要が大幅に伸びているカット野菜・果物も生産している。平成28年に、父から会社を引き継いだ。

同市高花平で2人兄弟の次男として生まれた。幼いころからサッカーが好きで、小1でサッカー少年団に入団した。6年生の時には、日本サッカー少年全国大会出場を果たした。シュートの瞬間がテレビ放映され、「かっこよかったな」と友達に褒められたのがうれしかった。「結果は4位だったが、最高の思い出になった」と懐かしむ。

笹川中からスポーツ推薦で四郷高校に進み、プロサッカー選手を目指して、サーカー漬けの毎日だった。高3になったころ、母が涙ながらに話してくれた創業時の父親の苦労を聞いて、父の仕事を一代でなくしたくないという思いが強くなり、自身の中でサッカーへの情熱とせめぎ合っていた。

そんな時、松阪大のサッカー部監督が同大への進学を勧めに訪れた。再三の直談判に父が折れて進学を許してくれた。サッカーに打ち込む日々が続いたが、プロへの道は険しく2年生で断念し、中退した。

20歳でマルユーに入社後、東京新宿市場仲卸の会社で約2年間修業を積んだ。全国から一級品が集まる市場で、荷運びの力仕事から、鮮度の見分け方、産地の異なる青果の特徴、土の違いで変わる形や味などを先輩たちから細かく教わった。「この2年間の経験がなかったら、今の自分はないと思えるほど多くを吸収できた」と振り返る。

東京での修業を終えマルユーに戻った。営業実績を上げるため、コンピューターシステムの導入により、営業、配送、事務など全ての職種で作業を効率化し、社員の就業時間を短縮させた。また、社員が気軽に意見を言い合える環境づくりを徹底し、社員50人の意識改革に取り組んだ。

昨年、父から会社を任された。食品流通の安心、安全、安定を追求、顧客の満足と社員とその家族の幸福を目指し、会社を維持するだけでなく、大きく成長させて次につなげようと決意を新たにした。社員の誕生祝い、子どもの進学祝いなどに加え、業績向上に伴う社員への還元も計画している。

共働きの妻と7歳の長男、5歳の次男の4人家族。双方の両親にとって初孫とあって、子どもたちは近くに住む祖父母にかわいがられている。「家族の笑顔と息子たちの成長が仕事への活力になる」と目を細める。

「今後は、やりがいを持って働いてもらえる環境を整えて労働力を確保し、手狭になったカット工場を市場内に増設したい」と意欲を語った。

略歴: 昭和56年生まれ。平成13年松阪大学(三重中京大学に改称後、平成25年に閉学)中退。同年マルユー入社。同14年東京新宿市場仲卸会社山権青果入社。平成16年マルユー再入社。同28年マルユー社長就任。