-「顧客の仕事を止めない」 創業31年、中小企業を支援- 「システムクリエイト」社長 渡邉洋昌さん

【「ビジネスサポートだけでなく、従業員が元気で働くための提案もしていきたい」と話す渡邉さん=四日市市鵜の森で】

 津市のOA機器販売会社の営業部でシステムエンジニアとして20余年勤めた後、平成元年に独立して四日市市新正でOA機器販売とソフトウェア開発の「システムクリエイト」を起業した。県内の中小企業を中心に実績を上げ、同市鵜の森に移転した。

 昨年7月、省エネ設備機器設計・製造・販売会社「グリーンユーティリティー」(本社名古屋市)が手掛けた新型コロナウイルス感染予防に有効なオゾン発生装置による空気清浄機「エアフレッシュEX」の県唯一の取扱店として販売を始めた。インターネットに記事が掲載されると県外からも注文が入るようになり、設置した企業や飲食店、美容室などから好評を得ている。

 また、グリーンユーティリティーが産学協同事業として新たに開発した安全で快適な「陽光LED照明・明王」の販売も今年から始めた。従来のLED(発光ダイオード)照明には省エネ・長寿命・低炭素などのメリットがある反面、電磁波ノイズや青色光による健康被害が懸念されている。陽光LED照明は光を通す板に特殊な表面処理を施して、電磁波ノイズや青色光を抑制することでより快適な光環境を提供できるという。

 四日市市で2人きょうだいの長男として生まれた。楽しい思い出になるはずだった小学校6年の修学旅行の直前、東海地域を中心に伊勢湾台風が襲った。家族と2階に避難して何とか難を逃れられたが、被害は甚大だった。しばらくして実施された奈良・京都への修学旅行には、台風で亡くなった友達の遺影を持参した。「毎年、台風のシーズンになると思い出して胸が痛む」と言う。

 中高6年間は、甲子園を夢見て野球に打ち込んだ。高校卒業後は桑名市の「サンジルシ醸造」に入社して、みそとしょう油の製造に携わった。

 勤務の傍ら将来のコンピューター社会を見据え、名古屋市のIT専門学校に通ってソフトウェア開発やプログラミング技術を修め、津市の「三重リコピー販売」に転職した。飛び込み営業で1日20社ほどの市内の企業を回ったが成果が出せず、11カ月目で初めて成約できた。以後は、時間を掛けてこつこつと信頼関係を築いていく営業という仕事の楽しさを実感できるようになった。

 同業3社が競合して売り込み大口の取引を獲得した際、相手社長から「他社の営業マンに比べて話は一番下手だったが、正直で任せられると感じた」と言われ、心からうれしかった。その社長には、独立後も仕事を任されている。

 42歳を機に一念発起して独立、起業した。システムエンジニアら5人の社員と共に、顧客それぞれに業務の効率化を図る最善のソフトウエア・システムの提案やOA機器販売をスタートした。併せて「顧客の仕事を止めない」ことをモットーに、迅速なアフターサービスに努めている。

 子ども4人は医師やパン職人、会社員とそれぞれが思う道に進み、妻と2人暮らし。コロナ禍で遊びに来られなくなった孫たちが好きな菓子などに添えて、手作りのマスクを送るのが妻の楽しみになっている。「これまで家のことも子育ても任せっきりだった妻の労を精いっぱいねぎらいたい」と話す。

 「創業から31年、仕事を通して多くの方々と出会い成長させていただいた。将来は、長年右腕となって支えてくれた社員に会社を任せたい」と話し、「各企業のビジネスが円滑に進むためのサポートだけでなく、従業員が元気で働くための提案もしていきたい」と語った。

略歴: 昭和22年生まれ。同41年県立四日市工業高校卒業。同年「サンジルシ醸造」入社。同46年「三重リコピー販売」入社。平成元年「システムクリエイト」創業。同8年四日市東ロータリークラブ入会。