極めて価値のあるモノ

本年の9月30日から11日間にわたり、愛媛県において第72回国民体育大会「愛顔つなぐえひめ国体」(本国体)が開催される。われわれ三重県国体サッカー成年男子チームが本国体へ出場するには、8月12、13日両日に静岡県にて行われる東海ブロック予選を突破する必要がある。今年は、愛知・静岡・岐阜・三重の4県で行うトーナメント戦に優勝した1県のみが、東海代表として本国体に出場することができることとなっている。

われわれ三重県国体成年男子チームが目標としているのは、2021年第76回国民体育大会「三重とこわか国体」での優勝に向けて、それ以前の本国体でベスト4以上の成績を残すことである。そのためには、対象となる国体選手はもちろん、彼らが所属するクラブ関係者全員が県下一丸となって国体参加の意義に同調し、協力して取り組む必要がある。

昨年12月、私は国体チームの強化担当者の方々に1つお願いをさせていただいた。それは、「三重県内の社会人上位3チームから、レギュラーメンバーをそれぞれ7名以上国体に派遣してもらいたい」という内容である。この条件は今年クリアできると考えているが、先に示した「クラブ関係者が国体参加の意義に同調する」という点においてやや不足しているように思う。

例えば、選手選考も兼ねた東海ブロック予選までの数少ない国体チーム練習会よりも、自チームの週末の公式戦の方を重要視するという問題がある。この問題点は、国体の成果よりも自チームにおいて成果を上げる方がメリットが大きく重要であるといった価値観が原因と思われる。また、国体活動での疲労やけがのリスクが大きいとの考慮も働いているであろう。

この問題を解決するには、国体に対する各クラブの価値観を共有する必要がある。そして、どちらかを重要視するでも軽視するでもなく、双方の経験が互いに生きるように工夫するしかない。

私は高校生当時に2回と社会人になって3回、本国体出場を経験させていただいた。その参加経験から国体の価値を私なりに表現すると、国体は国内最大規模のスポーツの祭典であり国内版オリンピックともいえる大会である。そこでの結果は、各県がスポーツ振興のために施した取り組みの成果そのものであり、県民の期待に対する責任は非常に重い。そのような大会に県を代表して出場でき、県民の期待と支援を受けて日頃の鍛錬の成果を思う存分発揮する機会を与えられることはサッカー選手としてこの上ない誇りである。

また、あまり知られていないが、国体の開会式・閉会式は開催県が全国に向けてメッセージを発信する機会として素晴らしいセレモニーとなっており、感動ものである。昨年でいうと、岩手国体は「復興の架け橋」というテーマのもと、東日本大震災後の支援に対する感謝を伝え、国体を通じて復興への思いを新たにするという内容で構成されていた。EXILEのメンバーと、被災地の中学生の生徒が全身全霊でダンスを披露し盛り上がりを見せていたことは非常に印象的であった。このような開会式・閉会式を間近で味わえることはスポーツ選手冥利(みょうり)に尽きるといえる。

このように国体は県内に一体感をもたらすまたとないイベントであり、開催県のメッセージが全国に発信される場でもある。4年後の「三重とこわか国体」が楽しみである。

中田一三
中田一三

なかたいちぞう 1973年4月生まれ。伊賀市出身。四日市中央工業高時代に、全国高校サッカー選手権大会に3年連続出場。92年1月の大会では同校初優勝をもたらし、優秀選手に選ばれた。中西永輔、小倉隆史両氏と並び「四中工の三羽烏」と称された。プロサッカー選手として通算194試合に出場。現在三重県国体成年男子サッカー監督。