難病の発症原因はウイルス感染か 予防法確立に期待、三重大など発見

三重大学の小久保康昌招聘教授らの研究グループは、世界で紀伊半島南部のごく一部地域などでみられる難病の神経変性疾患ALS/PDCが、ウイルス感染で発症する別の神経変性疾患と同種であることを発見した。ALS/PDCの原因特定や予防法確立につながる可能性が期待される。

小久保招聘教授によると、ALS/PDCは全身の筋肉が衰えるALS(筋萎縮性側索硬化症)や、体の震えなどを伴うパーキンソン病、認知症の症状が併発する難病で、国内では紀伊半島南部のみに存在している。

ALS/PDCは、脳や脊髄にタウタンパクと呼ばれるタンパク質が蓄積することで引き起こされるが、タウタンパクが蓄積される原因は分かっておらず、根本的な治療法は確立されていない。

研究グループはタンパク質の構造を保ったまま観察可能な「クライオ電子顕微鏡」でALS/PDCの原因となるタウタンパクを観察。頭部への外傷や麻疹ウイルスの感染で蓄積される別のタウタンパクと同じ構造を持つことを突き止めた。

東京都医学総合研究所やイギリスの研究機関などとの共同研究の成果で、科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に昨年12月に掲載された。

小久保招聘教授は「ALS/PDCがウイルス感染で引き起こされる可能性が示唆された発見。将来的にはワクチンなどの予防法に結びつく可能性がある」と話した。