2023年8月6日(日)

▼両親に対する自殺ほう助の疑いで逮捕された歌舞伎俳優市川猿之助容疑者が「私の記事が週刊誌に掲載されることを両親に話したところ、家族3人で次の世界に行こうということになった」と供述していて気になる

▼昭和61年のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」初演で、原作者の梅原猛氏が将来の猿之助少年に会っている。「楽屋前の廊下で一人の少年がしきりに竹刀を振って、ヤマトタケルのまねをしていた」

▼「父、段四郎がいつも悪役となり、無惨にも斬り殺されるのを大変悲しく思っていたが、『ヤマトタケル』において、熊襲タケルや伊吹山の山神に扮(ふん)した段四郎がすばらしい台詞(せりふ)を語り、みごとな悲劇的最期を遂げるのをみて、いたく嬉(うれ)しかったという」と書いている

▼「私の著書に魅せられ、果ては書生として私の家に住み込みたいとすら言うのである」とも回想している

▼梅原氏には生まれ変わる考え方を、日本の思想の根底に想定する著作が多い

▼だが、それよりも歌舞伎のせりふ「傲慢(ごうまん)か、さすがのヤマトタケルの命(みこと)も、傲慢という人間の病気にかかったのか」を思い起こしてほしかった。