敗退も輝いた球児たち 高校野球三重大会、最後の夏を糧に

【左から、久保田塁翔(久居農林)と阪口遼楽(松阪商)】

第105回全国高校野球選手権記念三重大会は27日に閉幕した。三重大会に参加した県内64校61チームの頂点にいなべ総合学園が立ち8月6日から阪神甲子園球場で開かれる全国大会に出場する。敗れたチームの球児たちもそれぞれの収穫を胸に次のステージへ向かう。

 久居農林は17年ぶりのベスト8進出を懸けた3回戦で前年度優勝校の三重に1―8でコールド負けした。それでも完投した3年生主戦右腕久保田塁翔には忘れられない打席ができた。

緩急を丁寧についた投球が身上。高校から本格的に投手の練習を始めると、野球部の大先輩で現役時代エースナンバーをつけた父親の助言も受け2年でエースに。高校最後の三重大会は1回戦から2試合連続完投勝利でチームを2年ぶりのベスト16に導いた。

「三重のトップ」に挑んだ3回戦。必要以上に肩に力が入り持ち味の制球力が影を潜めた。ボール球が先行し、四死球を出すと、三重打線の猛攻にあった。三回までに7点の大量リードを奪われるとその後追いつけなかった。

苦しい展開の中表情が一瞬輝いたのが四回、三重のクリーンナップに連続してフライを打たせた時だ。先頭の3番野田泰市外野手を中飛に打ち取ると、4番の大越渉内野手を左飛に打ち取った。この回を無失点で切り抜けて三重の勢いを止めると追加失点を六回の1点に抑えた。

野手とも連携し、外野フライに打ち取る練習を重ねてきた。「(三重の打者に)自分のバッティングをさせて打ち取るっていうのをテーマにしていた。それが3巡目でやっとできた」。悔しさの中に達成感もにじませた。

 大会第4シードの津田学園に0―8のコールド負けで準々決勝で敗退した松阪商。3年生の阪口遼楽主将は2020年の県独自大会以来のベスト8入りの一方、2年連続の4強進出を逃した今年の三重大会の結果を振り返り「ここまでしか行けなかったけれど、自分としては楽しい野球生活だった」。

野球部の新幹部を決める時点で「このチームでキャプテンをするのはぼくしかいないと思っていた」。高校最後の三重大会の約3カ月前には監督が交代。「監督が代わって難しいと言われたこともあった」が持ち味のキャプテンシーでチームをまとめ、4年連続のベスト8進出を果たした。

防戦一方の準々決勝は内野安打で出した津田学園の走者の二盗を1度阻止するなどして投手を必死にもり立てた。8強進出を決めた3回戦は4番として5打数5安打4打点の活躍。この春の遠征で、4月から監督に就任した五十子幸成教諭に夜まで自主練習に付き合ってもらったと話し「長打が出たのは先生のおかげ」と、周囲の支えにも感謝した。

1人何役もこなし、高校野球に打ち込んだ2年半が野球の魅力を再発見するきっかけになった。準々決勝後「野球を続けるかどうか考えてきたが今日決めた。こんなに楽しい野球。進学して続けたい」。笑顔で話した。