「北畠の落日」執筆経緯語る 自費出版の伊東さん講演 津の引接寺

【「北畠の落日」について話す伊東さん=津市木造町の引接寺で】

【津】三重県津市久居地区のボランティアガイド団体「久居城下案内人の会」はこのほど、津市木造町の引接寺で歴史講演会を開いた。昨年歴史小説「北畠の落日」を自費出版した同町出身の伊東文子さん(63)=同市野田=が「北畠の落日~木造に生まれて」と題して執筆に至る経緯や自身の思い出などを話し、約30人が聴講した。

伊東さんは元県立高校社会科教諭。定年後大台町三瀬谷の北畠史跡に興味を持ち「北畠氏の滅亡が歴史小説になっていないことが不思議。誰も書かないなら自分が、と思った」と経緯を話した。

小説は血を分けた兄弟である北畠具教と木造具政との確執を描く。伊東さんは織田信長の伊勢侵攻の際、具政が織田方に付いた史実について「武家社会は嫡子と2番目以降では扱いが違う。具政が自分の人生を歩もうとした結果では」「織田に比べて北畠は力が弱い。家臣のことを思い織田方に付いたのでは」などと推察した。

同町で過ごした自身の幼少期にも触れ、養蚕をしていた祖母のそばで聞いたクワを食(は)むカイコの音や、通学路にあった造り酒屋のこうじの香りなどの思い出を語った。