2023年7月11日(火)

▼「私たちが預かった(とみられる)子どもが亡くなったことは、無念で言葉もない」と、暴行死した津市の4歳女児が生後間もなく預けられたという「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する熊本市の慈恵病院の蓮田健院長が地元紙に語っている。「子どもを預け入れる親は追い詰められ『人生の限界』に達している」とも

▼平成31年2月から預かり、同県の乳児院を経て令和元年6月から三重県の児童相談所が関わり、県内の乳児院に入所して同3年3月、家庭復帰したらしい。「ゆりかご」を訪ねた時、母親は「経済的に厳しく育てられない」と話したという。「人生の限界」がそのことだとしたら、コロナ禍の2年後にそこから脱したと考えるのは幻想に近いのではないか

▼育児ノイローゼなどうつ状態はさまざまな「人生の限界」を要因にどんな母親にも発生する危険があるが、いったんなると回復は難しく、改善したかに見えても同じ環境になるとまた同じ状態に戻る。経済的に追い詰められている状態を児相はどこまで見極めていたか

▼新型コロナが5類に移行されて県内の子ども食堂も次々再開したが、以前に比べ3、4倍の子どもが訪れる。居場所として浸透したこともあるが、貧困家庭がそれだけ増えていると開設者らは見る

▼日本の出生児は、夫婦からの届け出が98%という。それ以外の出生児は厳しい経済状態に置かれることを意味しよう。母親が暴行死容疑で逮捕されるまでの4年間に胸の詰まる思いもするが、児相が一切の経過の説明をせず、第三者委員会任せというのも釈然としない。