AIで児相判断、一時保護せず 津の女児死亡事件 全協で報告

【母親から暴行を受けた女児が死亡した事件の対応について報告を受ける県議ら=県議会議事堂で】

三重県は10日の県議会全員協議会で、津市内の自宅で母親(42)から暴行を受けた三女(4つ)が死亡した事件の対応を報告した。虐待の通告を受けた児童相談所が三女を一時保護しない判断をするに当たり、AI(人工知能)を用いた県独自のシステムによる評価結果を参考にしていたことを明らかにした。

県によると、児相の担当者らは昨年2月に「三女の両頬と両耳にあざがある」との通告を受け、訪問で三女と面会。年齢などの基本情報に加え、けがの場所や状態などの21項目をシステムに入力した。

これにより、過去に起きた同様の事案で一時保護をしていた割合は「39%」と表示されたという。県の担当者は「感覚的にもしっくりくる評価だった。決して違和感のある数値ではなかった」と振り返る。

この結果に加え、あざの原因が虐待だと断定できないことや、母親が児相の指導に応じる姿勢を示したことなどを踏まえ、県は三女の一時保護を見送ることを決定。定期的な見守りで対応することにしていた。

この日の全協では、システムの取り扱いに関する指摘が相次いだ。吉田紋華議員(共産党、1期、津市選出)はAIの信頼性を疑うべきだと主張。県の担当者は「システムの評価はあくまで目安」と説明した。

稲森稔尚議員(草の根運動いが、3期、伊賀市)は「システム導入時は先端性などの素晴らしさばかりが宣伝された」と指摘。「AIの欠陥を検証し、人材を育成しなかった責任を認識すべき」と訴えた。

一見勝之知事は「AIを100%信じているわけではない」としつつ「導入すれば依拠してしまうこともあると思う」と説明。「(AIが)無かったらどうなっていたかも検証する必要がある」と語った。

県は児童虐待対応業務の効率化や意思決定の迅速化などを目的として、1年間の実証実験を経て令和2年7月にシステムの運用を開始。「全国初のAI」とアピールし、他県にも導入を呼びかけていた。

このほか、一見知事は全協で、児相の職員が三女に会って安否を確認しなかったことを今回の課題に挙げた。中村徳久子ども・福祉部長も「目視で確認しなかったことは大きな問題だった」との認識を示した。

これに対し、小島智子議員(新政みえ、4期、桑名市・桑名郡)は「一時保護の代わりに定期的な見守りをすると決めたなら、それをすべきだった」と批判。「介入できるポイントは多かったはず」と述べた。