狂った人生、支援訴え 朝日町女子中学生致死事件で被害遺族講演 三重

【犯罪被害者支援の現状と課題について訴える寺輪さん=津市の県人権センター多目的ホールで】

【津】平成25年8月に三重県朝日町で女子中学生=当時(15)=が襲われて亡くなった強制わいせつ致死事件で、父親の寺輪悟さん(54)が7日、津市一身田大古曽の県人権センター多目的ホールで被害者遺族として講演し、「いつ犯罪の被害者や被害者遺族になるか分からない。支援のための選択肢はどれだけたくさんあってもいい」と呼びかけた。

犯罪被害者への支援に携わる県内の関係機関や団体との連携強化を目的とした県犯罪被害者支援連絡協議会(会長・難波正樹県警本部長)の基調講演としての位置づけで、警察職員や関係機関など約170人が参加した。

寺輪さんは、事件の衝撃や連日の取材によるストレスで家族が体調を崩し、現在も立ち直り切れていないことを明かし、「たくさんの人生が狂わされたのは間違いない」と振り返った。

犯人の元少年は裁判員裁判を経て懲役5年以上9年以下の不定期刑の実刑判決を受け、この9月に出所を予定している。発生から10年がたとうとする現在も元少年側からの謝罪は一切ないとし、「悔しくて仕方がない」と語気を強めた。

少年法改正前の事件で、被害者は実名報道される一方、犯人の元少年についてはプライバシーが保護され、高卒認定も受けた点に疑問を呈し、「裁判は殺された無念や遺族の敵をとるのではなく、加害者の刑を決めるものと気付いた。これがこの国の司法。加害者が少年法と人権で守られているのが現状」と強調した。

事件後、寺輪さんは自身の立場から犯罪被害者支援条例制定に向けて県や市町に働きかけ、令和4年10月には県と県内29市町全てで条例や要綱が制定された。

寺輪さんは警察や犯罪被害者支援センターのサポートに感謝を示しつつ、一部行政手続きなどに配慮が足りていないとし、「被害に遭えば死ぬまで遺族は続く。加害者や行政、司法に苦しめられるという現実を分かってほしい」と話した。

この4月に県警察学校に入校し、講演を聴講した初任科生の女性(23)は「これから捜査を担当する立場として、作業的ではなく、被害者に寄り添う必要をあらためて感じた」と話していた。