<まる見えリポート>1人乗りヨットの黒田、津から世界へ 五輪目指し「経験積む」

【黒田浩渡】

1人乗りヨットのILCA7(旧レーザー)級で三重県から2028年ロサンゼルス五輪を目指す10代がいる。オリンピックを目標とした日本セーリング連盟のホープ育成プログラムに所属する黒田浩渡(19)だ。出身は大阪府で津工業高校進学を機に単身三重県に転居した。22年3月の高校卒業後は、機械メーカーのナブテスコ(本社・東京)に就職。活動の拠点は変えず、同社の津工場に勤務しながら競技生活を続ける。社会人2年目の今年は年代別の世界大会で実績を残す以外にもシニアの大会に積極的に参加し、経験を積む年にしたいと話す。

小3で地元のヨットチームに入りセーリング競技を始めた。ほどなく一人乗り種目への挑戦を始め、高2で女子の五輪種目、レーザーラジアル級で日本一に輝いたことも。男子の五輪種目、ILCA7級への挑戦は高3からで日本選手権は2年連続3位。高校卒業直前の22年2月に行われた杭州アジア大会代表選手選考会でも大学生や社会人に混じり総合4位に入り実力の片りんを見せた。

三重県との接点は2021年に開催が予定されていた三重とこわか国体。地元国体に向けて強化が進む本県の競技関係者に誘われ、中学から津市の伊勢湾で練習するようになった。津工業高校に進学すると、身長182センチの均整の取れた体格に加え、学校から津市のヨットハーバーまで自転車で10分程度の恵まれた練習環境で実力を伸ばした。三重国体はコロナ禍で中止となったが、高校3年間の経験は現在も財産。国内第一線で戦う中で「まわりの人はセンスの塊しかいない」とため息をつく一方、「(ヨットに)乗っている量は(自分の)強みかと思っている」と胸を張る。

社会人1年目の昨年は「環境作り」の年だった。職場の理解を得て日本セーリング連盟の合宿に精力的に参加する一方、体作りにも精を出し、高3で70キロを切っていた体重を10キロ以上増強した。2年目は「経験を積む年にしたい」。4月にはオリンピック種目が一堂に会するレガッタとして50年以上続く伝統の大会「フランス・オリンピックウィーク」に初めて参加。21年東京五輪に百五銀行所属で出場した南里研二選手(ミゾタ)らパリ五輪を目指すシニア選手の実力を肌で感じながら海外遠征に必要な知識も学んだ。

年度後半もレースは目白押し。21歳以下の世界選手権(モロッコ)では10位以内の上位を目指す。五輪の出場枠を争うアジア大陸予選(タイ)などパリ五輪に直結するレースにも相次いで出場。目下2022―23クラス別日本ランキング1位につけている19歳は「(現在日本代表の)先輩たちを(安心して)送り出せるくらいの選手になりたい」と意気盛んだ。