過去に養育困難で相談 児相に虐待疑い通告も 4歳三女死亡・三重

【女児の傷害致死事件を受けて会見する(左から)中澤県児童相談センター長と近正樹県子ども福祉・虐待対策課長=県庁記者クラブで】

三重県津市久居野村町で女児=当時(4つ)=が母親から暴行を受けて死亡した事件を受けて、児童相談所を管轄する県は29日、県庁記者クラブで会見し、逮捕された中林りゑ子容疑者(42)から過去に養育困難の相談を受け、女児を施設に入所させる措置を決定していたことを明らかにした。措置解除後、虐待を疑わせる通告も把握していたが問題ないと判断し、間接的な近況調査にとどめていたという。

県によると、中林容疑者から平成31年2月、「シングルマザーで頼れる人間がいない」などと中勢児童相談所に相談があり、女児を一時保護したうえで令和元年6月、乳児院に入所させる措置を決定した。

その後、中林容疑者から「自分で養育したい」と要望があり、保育所への入所決定や親族による支援が期待できること、また中林容疑者との外泊の様子を家庭訪問した結果を踏まえて同3年3月、措置解除と家庭への復帰を決めたという。

しかし翌4年2月、関係機関から「(女児の)両ほおと両耳にあざがある」として虐待疑いの通告があり、同児相は家庭訪問による聞き取り調査を実施した。

調査に対し、中林容疑者は「ベッドから落ちておもちゃ箱に突っ込んだ」として虐待行為を否定し、児相からの指導や支援に応じる姿勢を示したという。あざが軽微で、女児にも不自然な点が確認できなかったことから、児相は虐待を認定せず、定期的な見守りにとどめる方針を決めた。

児相は国のガイドラインに従って3カ月に1度、女児が通う保育園や親族を通じて母親や女児の近況などの聞き取りを実施していた。一方、女児は昨年7月8日を最後に登園を中断。その後も児相は電話など間接的な調査にとどめ、自宅への家庭訪問など、女児や母親と直接対面して話を聞く機会はなかったという。

県は今後、弁護士やスクールカウンセラーなどを委員とする第三者委を立ち上げ、問題点などを検証する方針。同居していた2人の姉については既に県内施設で保護しているという。

県の対応に不備があったという指摘について、県児童相談センターの中澤和哉所長は「一人の子どもが亡くなったことで重く受け止めている。国の指針にのっとって展開してきたが、指摘を含めて第三者委の検証が必要」と述べた。

痛恨の極み
一見勝之知事の話 将来ある三重の子どもの命が失われた事に対し、心よりご冥福をお祈り申し上げます。子どもの命を守り、健やかな成長を支えることを県政の最大の使命として取り組んできましたが、児童相談所が指導中であったにもかかわらず、子どもの命を守れなかったことは痛恨の極みであり、後悔の念に堪えません。速やかに外部の方々による委員会を設置し、県としても全力でサポートしてまいります。二度と子どもの命が奪われることのないよう、私を先頭に県庁全体で再発防止に取り組んでまいります。