津の28年間無医地区に巡回診療 桑名・ヨナハ丘の上病院、今月末開始 三重

【巡回医療の協定締結した津市の前葉市長(左)と医療法人尚徳会の佐藤副理事長=市役所で】

【津】約28年間無医地区となっている三重県津市美杉町太郎生地区に対し、桑名市の医療法人尚徳会ヨナハ丘の上病院が巡回診療することが決まり、21日に市役所で市と同病院の連携協定の締結式が行われた。6月30日から開始する。

市によると、太郎生地区の診療所は平成7年8月に閉鎖。以降は健康相談所が運営されていたが、平成30年には同所も閉鎖されていた。

無医地区は4キロ以内に50人以上の住民がいるが医療機関がなかったり、容易に診療が受けられない状態。太郎生地区は人口約650人で、県内ではほかに紀宝町浅里の2地区のみとなっている。

太郎生地区から最も近い病院で約10キロ離れた医療クリニック。住民は生活圏となっている名張市の病院に行くことも多いとする。ただ、65歳以上の高齢化率は約54%で、平均の30%より進んでいる状況。住民からは身近な診療所が望まれていたという。

今回の巡回診療は同病院からの申し出を受け、実現した。同病院は令和3年11月にオープン。社会貢献の一環として、へき地での医療提供を実施するという。

診療は旧健康相談所の施設を利用し、金(午後3時―同5時)・土(午前10時―正午)の週2回、月に2週か3週を予定。同病院から総合診療科の医師と看護師、事務員各1人が派遣される。診察以外に薬の処方もできる。

締結式には前葉泰幸市長と尚徳会(与那覇尚理事長)の佐藤芳邦副理事長が出席した。佐藤副理事長は「地域の皆さんに寄り添った医療が使命。健康、福祉に貢献することをお約束する」とあいさつ。実施は創業者の与那覇理事長の地域に恩返しをしたいとの思いがきっかけだったという。

前葉市長は「旧美杉村の大きな課題となっていたが、高い志を受け、光明を頂いた。末永くよろしくお願いしたい」と述べた。