2023年6月13日(火)

▼桑名市の多度大社の「上げ馬神事」でまた、動物虐待批判がSNS上で噴出した。同大社がホームページで「動物の愛護や管理に関する関係法規を遵守し、歴史的及び文化的価値が損なわれないよう努めて参ります」と釈明したが、収まる気配はないらしい

▼動物愛護は12年前の神事で、本番前に馬の腹部などを蹴ったり殴打し、興奮させていることが問題となり、動物愛護法違反の容疑で書類送検され、県教委からも勧告を受けた。今回は、4年ぶりに再開した神事で坂を駆け上がる際、転倒して1頭が骨折し安楽死処分を受けた問題。県の調べで平成22年に1頭、同26年に2頭が骨折し、処分されていることが分かった

▼伝統行事と現代の感覚とを調整することは難しい。大相撲では女性を土俵に上げないというしきたりと、総理大臣杯を渡す女性官房長官との間で衝突があった。女性差別という官房長官側の主張はもっともだが、しきたりを守ることが伝統存続の源泉でもある

▼神事の精神「人馬一体」も、かつて人と馬が同居する「曲がり屋」の家屋が全国各地に見られたころと今とでは違ってきていよう。乗り手の若者は1カ月身を清め「厳しい生活を乗り越えて臨むことこそ伝統」(大社関係者)というが、技量などを含め、昔ほど一体とはいくまい

▼馬を奉納して神社に願い事をする習慣が絵馬に変わったのは周知の通り。時代に適合させてこそ伝統は継続していく。県の誇る無形文化財であり、貴重な観光資源が、動物愛護や動物虐待の視点から非難されるのは残念。今度こそ根本的な改善方針を―。