人口減少対策方針、指標の再検討要求 「ちょっと弱い」と指摘 三重県議会一般質問

【一般質問した4議員】

三重県議会6月定例月会議は12日、藤田宜三(新政みえ、5期、鈴鹿市選出)、野村保夫(自民党、3期、伊勢市・鳥羽市)、下野幸助(新政みえ、4期、鈴鹿市)、野口正(自民党、3期、松阪市)の4議員が一般質問した。県が人口減少対策方針の最終案で合計特殊出生率などの数値目標を設けずに「モニタリング指標」として設定したことに対し、下野議員は「ちょっと弱い」と指摘。指標の再検討を求めた。政策企画部は「(出生率などは)県だけでなく、外的要因の影響を受ける」と説明し、最終案への理解を求めた。

科捜研の建て替えは
藤田 宜三議員(新政みえ)
建て替え予定の科学捜査研究所(科捜研)の進捗(しんちょく)を尋ねた。県警は年度内に実施設計を策定し、構造などを具体化させると報告。令和6年度に着工し、8年度に完成する見通しを示した。

【自給率】
藤田議員 食料の海外依存度が日本ほど高い国は他にない。農業従事者の減少と高齢化が急速に進んでいる。農業者の持続的な経営が食生活を守るための根幹を成す。生産力の向上が必要。輸出促進と自給率向上の取り組みは。

中野農林水産部長 農地の集積や担い手の経営力向上、スマート技術の活用に取り組んでいる。病害虫対策や商品開発、プロモーションなどを通じて海外への販路拡大も支援している。自給率を高めるため、米粉用品種や肥料の栽培実証などを進めている。

【科捜研】
藤田議員 令和2年に県警の科捜研を訪れた当時、200点を超える機器がひしめいていた。新たな施設の建設に向けた現在の状況と今後の見通しは。今後も鑑定の機器が増える見通しだが、将来を見据えた面積も必要になる。

難波県警本部長 新施設は鑑定分野ごとにフロアを分け、鑑定資料の汚染や紛失を防ぐ。スペースは現在の2倍で、将来の鑑定技術に対応したスペースも確保する。本年度は実施設計で構造などを具体化する。建築は令和6年度に着手し、8年度に完成の見込み。

海女漁業への対応を
野村 保夫議員(自民党)
漁獲量や担い手が減少する海女漁業が「危機的な状況にある」と訴え、対応を求めた。農林水産部は稚貝の放流や藻場の造成に取り組んでいると説明。担い手の確保を図る考えも示した。

【海女】
野村議員 海女漁業の存続が危機的な状況。鳥羽市では昭和53年に1965人だったが、令和4年には373人に減った。磯焼けなどによって漁獲量も減少している。資源の回復や担い手の確保にどう取り組むのか。

中野農林水産部長 クロアワビなどの稚貝を生産して放流してきた。減少の原因を調べるモニタリングや藻場の造成、食害対策の支援なども進めている。就業フェアでの紹介や漁師を育成するサイトの運営、研修への支援など、担い手の確保にも取り組む。

【部活動】
野村議員 休日の部活動地域移行には課題が山積している。子どもが少ない地域では移動に課題がある。地域の負担に配慮する必要もある。都市部と地方では同じように進められない。地域の実情に応じて進めるべきだと考える。

福永教育長 地域ごとに状況が異なり、直面する課題もさまざま。画一的に進めるのは難しい。課題を把握し、成功事例の共有を図ることが重要。まずは部活動に外部指導者を入れるなどし、可能な部活動から地域移行を目指す段階的な推進も視野に取り組む。

子ども医療費拡大を
下野 幸助議員(新政みえ)
子ども医療費の助成制度に市町で差があることを問題視し、県の補助対象を広げるよう求めた。医療保健部は財政状況が制度の持続性に与える影響を懸念しつつ、検討を続ける考えを示した。

【人口減対策】
下野議員 人口減少対策方針の最終案に記したKPI(重要政策評価指標)を達成すれば、転出超過を抑えられるのか。県は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で数値目標を掲げていたが、今はモニタリング指標。ちょっと弱いと思う。

後田政策企画部長 合計特殊出生率や転出超過の改善は目指すが、こうした指標は県だけでなく、さまざまな主体の取り組みが関係し、社会経済情勢など外的要因の影響を大きく受けるため、モニタリング指標として設定した。指標に資するKPIも別で設けた。

【子ども医療費】
下野議員 子どもの医療費の補助制度は市町によって対象の年齢などが違う。住んでいる所で制度が異なることに不公平感がある。まずは県の補助対象を中学生までに拡大し、現物給付(窓口無料)も段階的に拡大してはどうか。

小倉医療保健部長 市町によって課題や方向性、財政状況などが異なり、制度に差異がある。一本化には県や市町間の十分な調整が必要。拡充した場合に財政悪化を理由にやめる訳にもいかず、持続性も求められる。市町や関係者の意見を聞きながら検討したい。

地方卸売市場課題は
野口 正議員(自民党)
老朽化や取り扱い金額の減少など、県内の地方卸売市場が抱える課題を訴え、県の認識と対応を尋ねた。農林水産部は「地方卸売市場は食品流通の要」とし、施設の改修や集荷量の拡大などを図る考えを示した。

【公設市場】
野口議員 県内には三つの地方卸売市場があるが、インターネット販売や直接取引の増加、物流の発展などにより、取り扱い金額が減少している。施設の修繕やスマート化などにも取り組まなければならない。県の認識と将来のあり方は。

中野農林水産部長 地方卸売市場は県民の安全安心な食生活を支える食品流通の要。県は市場同士の連絡会議を設けて課題を共有している。働き手の確保や空調設備の更新などを進め、食材を安定的に供給する役割を果たせるよう、引き続き取り組む。

【技能実習】
野口議員 外国人技能実習制度は、受け入れ体制や報酬などに問題があると指摘される。国は制度の見直しを進めているが、制度の変更によって実習生や受け入れ企業に大きな影響が出る。実習先での問題や県の対応は。

小見山雇用経済部長 一部の技能実習生からは、給料面や日本語教育などに不満の声が上がっている。昨年度は労働基準法や在留資格などをテーマに企業向けのセミナーを実施した。実習生や企業の声を聞き、安心して就労できる環境づくりを支援する。