元職員に懲役1年6月求刑 名張市の贈収賄事件 津地裁・三重

三重県名張市発注の営繕工事の随意契約で業者に便宜を図った見返りにゴルフクラブや現金を受け取ったとして、収賄罪に問われた元同市職員中西隆之被告(52)=百合が丘東=の論告求刑公判が6日、津地裁(西前征志裁判長)であり、検察側は懲役1年6月、追徴金25万5767円を求刑した。判決は7月10日に言い渡される。

検察側は現金の授受に関する冒頭陳述で、「教育委員会の建築技師をしていた平成18年ごろに共犯者と知り合い、公共工事受注の見返りに接待や現金を受け取るようになった」と指摘。金銭に困っていた共犯者に現金を貸し付け、返済の一部として自宅の給湯器やトイレ設置工事をさせていたことも明らかになった。

2件の収賄事件に関する論告で、検察側は「収受額は合計64万円で少額とは言えず、公務員の職務の公正を大きく害するものであるのは明らか」と指摘。賄賂品の要求に先立ち、恩を売って要求を断りにくい状況を作りだし、相見積もり業者の選定や見積もり合わせの額についても緊密に連絡して指示を出すなど、「手口は巧妙かつ手慣れた悪質な犯行。私腹を肥やすための経緯や動機に酌量の余地はない」と強調した。

弁護側は「入札価格は不当に安いものだったり、高過ぎて市に不当な支出を強いるものでもなく大きな被害は生じていない。管理職になり、残業手当がなくなるなど、正当な支払いが必要な背景もあった」と主張。懲戒免職による社会的制裁を受け、贖罪(しょくざい)寄付として100万円を弁護士会に託したとして執行猶予を求めた。

起訴状などによると、中西被告は当時、市発注の随意工事の見積もり業者選定を担当する都市整備部営繕住宅室長として、市発注工事受注への便宜に対する見返りとして令和3年5月―7月までの間、元会社役員の男(32)からゴルフクラブ15本(計46万円)を受け取った。また同市教委発注の別の工事受注への便宜の見返りとして4年12月、中嶋工業経営の中嶋孝一被告(61)=贈賄罪で起訴=から現金18万円の供与を受けたとされている。