2023年6月6日(火)

▼鈴鹿市の交通難民問題というと平成28年に同市の大規模団地で発生した中2少年暴行死事件を連想する。成長した子どもが団地を離れ住民は高齢者中心になり、往年の賑わいは消えて商店は次々撤退していった。買い物難民となって引っ越しする住民も増え、その一人が暴行現場について「昔は子どもたちを遊ばせて人々の声が絶えない場所だったが、近頃は誰も寄りつかなかった」

▼同市有数の玉垣地区も、数年前から駅からもバス停からも一定以上の距離がある交通空白地域が増え、住民の難儀となっていたのだろう。切羽詰まった同地区の玉桜まちづくり協議会が、昨年秋ごろから地区内を運行する予約型乗り合い送迎サービス(デマンド型交通)の検討を始めた

▼同協議会会長は市自治会連合会会長でもある。その動きに慌てたか、音なしの構えに見えた市が年度内に、難民対策の手順書を作成すると言い出した。市の支援をまとめるとも言い、新交通システム運航事業費として6月議会に上程するという。計画的な市の事業を予算に反映させる当初予算でなく、この時期新規の補正予算案というのが、いかにも急ごしらえ感をにじませる

▼ニーズ把握のためにアンケートを実施するほか、導入地域の公募選定もし、全市に共通するシステムを設計した上で、年度内には実証運用も始める。意気込みは認めるとして、それができるならデマンド交通の必要性はぐっと減る

▼公平をお題目にできもしないことで時間稼ぎするつもりではあるまいが、地域特有のニーズ、計画を市は補助する姿勢に徹してはいかがか。