<ラストチャンス・皇大最強世代の挑戦>「つなぎの打撃」目指す主砲 チームメートへの深い信頼

【悲願の春の東海大会制覇に向けてバットを振る皇學館大4年主砲、村田=伊勢市内で】

皇學館大初のNPB(日本野球機構)入りを目指す4年生主砲村田怜音。今月2日、四日市市で行われた四日市大との三重県リーグ優勝決定戦には9球団12人のスカウトらが駆けつけた。そんなプロ注目の強打者が忘れられない試合と話すのが大学2年の2021年春の東海大会。前年の大会はコロナ禍で中止となっており、入学以来初めて挑む、全国大会の切符をかけた大一番に8番、一塁で先発出場した。

神宮球場などで毎年6月に行われる全日本大学選手権の代表決定戦を兼ねる春の東海大会は、三重、岐阜、静岡の各県代表3校のともえ戦形式。この日2試合目から登場した皇學館大は静岡代表の日大国際関係学部を下して1勝を挙げたが、最終戦の第3試合・岐阜聖徳学園大戦に敗れて1勝1敗の2位で終えた。

5―6で敗れた岐阜聖徳学園大戦は終盤まで5―5の同点だったが、九回表1点勝ち越されるとその裏追いつけなかった。最終回2死一塁の場面で打席に立ったのが村田。この試合、初打席の二回にチーム初得点をもたらす適時打を放つなどの活躍を見せたが、この回の打席で快音は聞かれず、最後の打者となった。

1点差で逃した全国切符。試合後ホームベース付近でたたずみ、スコアボードを見つめて涙を流す村田がいた。こみ上げてきたのは自分を責める気持ち。「力を出し切れなかった。ダブルヘッダーがきつすぎていつの間にか終わってしまった感じ。もっと打てたんじゃねえかな、みたいなことを思っていた気がします」。

196センチ、115キロの堂々たる体格の右打者。相可高校時代から一貫してプロ志望で、皇學館大への進学を決めたのも「そんなに強くないチームで、1年生から活躍した方が周りから注目されやすい」と思ったからだ。夢に近づくため、大学通算30本塁打を自分に課して鍛錬する姿は周囲の良きお手本。今季の三重県リーグも8試合で3本塁打を放ち昨年秋に続く本塁打王まであと1本と迫った。

ただ、「3度目の正直」の優勝を目指す今年春の東海大会に向けては「ホームランも打ちたいが、まずは後ろにつなげる」。「出塁率10割を目指して、アウトにならなかったら良いと思っています」とも話し、チームバッティングに徹する考えだ。

背景にはこれまで育んできたチームメートとの信頼関係がある。特に高校時代三重県内でしのぎを削ったライバル校の主力が集まり「入学した時から最強世代と言われて来た」4年生メンバーには絶対的信頼を置く。「点を取る力が結構あるし自分が何か提案したら一緒に動いてくれる。一体感がある」同期と臨む最後の春は内容にもこだわりたい。「僅差というよりか圧勝して、ぼくは神宮(球場)に行きたいなと思っています」。