<ラストチャンス・皇大最強世代の挑戦>最上級生の自覚 連続2位の悔しさ発奮材料に

【東海地区・北陸・愛知三連盟王座決定戦の決勝で敗れ悔しそうな表情を浮かべる皇學館大の井田(左から2人目)ら=2022年10月、ダイムスタジアム伊勢で】

大学野球の三重県リーグでこの春9季連続11回目の優勝を遂げた皇學館大。全日本大学選手権(6月・神宮など)の出場枠1を懸けて今月、伊勢市で開催の東海地区春季選手権に臨む。初優勝で全国大会に初出場した2015年以降、東海の春の頂点から遠ざかり19年以降はすべて準優勝。大学1年目の20年から公式戦に出場する4年生遊撃手井田翔斗は「ずっと悔しい思いをしてきた」と話す。

打っては3番。攻守で高いレベルを維持する選手だ。甲子園出場経験校の津商で高2からレギュラーを張るなど経験豊富。それでも全国の舞台に立った経験はまだない。

高3夏の県大会で初戦敗退した後、愛知の強豪校と迷った末皇學館大への進学を決めた。自分たちの勧誘で高校まで足を運んでくれた森本進監督の人間性に好感を持ったのに加えて、同年春の東海大会で準優勝していた皇大が「神宮に近い」と感じたからだ。

30人を超す同期の中で先発デビューは一塁手の村田怜音とともに最も早い1年の秋。以後スタメンの座を守り続け、県内で連覇を続けるチームの一翼を担ってきたが、全国への壁は破れずにいる。

昨年は秋の東海大会で4年ぶりの優勝。神宮大会の出場枠1を懸けて伊勢市で行われた東海地区・北陸・愛知三連盟王座決定戦も初戦を突破したが、決勝で名城大(愛知)に敗れた。

全国への「ラストチャンス」の今年。周囲への関わり方を変えた。「初めてリーグ戦を戦う子たちが自信を持ってプレーできるようにする。それができるのが経験的に一番上の自分や村田」。練習の時から後輩らのやりやすい雰囲気づくりを心がけている。

自主練習はほぼ欠かさず参加。野球部の練習以外もジムに通って体作りを怠らない。「しゃべるのは苦手」な攻守の中心選手の自覚の表れを、チームメートたちも感じ取る。

今月2日、四日市大との首位攻防戦を制して三重県リーグ連覇を決めたが、事前の話し合いで歓喜の輪は作らなかった。視線の先には再び伊勢で行われる春の東海大会がある。

個人では昨季を上回る打率4割2分3厘で通算4度目のベストナイン受賞。4番にはプロ注目の強打者に成長した村田がおり、控えにも信頼の置ける同期がそろう。仲間の存在に「心強い。思い切っていける」と感謝しながら「悔しい思いはもうしたくない。皆の前でしっかり勝って今回こそ絶対に神宮に行きたい」。

 全日本大学野球選手権の代表決定戦を兼ねる東海地区大学春季選手権が20日、ダイムスタジアム伊勢で開かれ、三重、岐阜、静岡の各県リーグ優勝校が参加する。地元伊勢市から出場の皇學館大は4年生の活躍が8年ぶりの全国大会進出のカギ。皇大初のNPB入りが期待される村田を始め「最強世代」の呼び声高い最上級生たちの〝最後の春〟にかける思いを紹介する。