小津監督の松阪教員時代 児島氏、小説「おーづせんせい」発刊 今年生誕120年

【児島秀樹氏が執筆した「おーづせんせい」】

【松阪】脚本家・放送作家の児島秀樹氏(67)=京都府精華町=はこのほど、映画監督の小津安二郎が三重県松阪市で過ごした代用教員時代を描いた小説「おーづせんせい」(320ページ。税別2千円)を徳間書店から発刊した。漫画家のちばてつや氏がカバー画を手がけた。

小津監督は今年12月12日に生誕120年、没後60年を迎える。大正11年、宮前村(現在の松阪市飯高町)の宮前尋常小学校5年男組の担任として代用教員の職を得た。翌年、松竹キネマに入社する。

児島氏は伊勢市生まれ。テレビドラマ「洞窟おじさん」の脚本や「日立世界ふしぎ発見!」の構成などを担当してきた。

本書は小津の教え子らが書いた文集を基に執筆した。東京でつらいでっち奉公をしていた教え子が、唯一の知り合いの小津監督を訪ねたところ、気さくに会ってくれ、「地獄に仏に会った思い」と回想するエピソードを読み、「すごくしびれた。この話から始まる物語を書きたい」と思い立ったという。

「初恋」「珍布峠の決闘」「ヒョウタンの失恋」「花岡座」など13章構成。カバー画は「小津の世界観と親近感がある」と感じていたちばてつや氏に依頼し、引き受けてもらった。本の帯に「あの名作の原風景は三重県松阪市での青春時代にあった」「若き小津と教え子たちの知られざる物語」とうたう。

児島氏は「小津はものすごい人気があった。雨の日、他の先生は掃除をさせるが、小津は子どもたちが一度も見たことのない活動写真をサイレント映画の弁士よろしく再現する。それが子どもたちの一番の思い出になっている」と説明。「教え子の文集は埋もれてしまってはいけない素敵な記録。不思議な巡り合わせで生誕120年に出版できた」と語った。

発売を前に4月21日、同市役所で竹上真人市長と面会し、本を披露した。竹上市長は「ストーリー展開がすごくいい。映画になるといい」と話し、同市の小津顕彰事業につながる情報発信を喜んだ。