▼「名前をつけた牛はそうでない牛よりミルクをたくさん出すことを発見」で、英国のニューカッスル大の研究者たちが獣医学賞を受賞したのは平成21年のイグ・ノーベル賞である。ノーベル賞のパロディとして「人々を笑わせ、そして考えさせる業績」に贈られるこの賞は日本人も受賞の常連。実際より小さく見える「股のぞき効果」の実験で立命館大学教授らが同26年に知覚賞を。昨年は、歩行者同士が時には衝突することがある理由を明らかにする実験で京都工芸繊維大学助教らが動力学賞を受賞した
▼玩具などを手がけるバンダイの「たまごっち」開発者も同九年に経済学賞を受賞しているが、理由は「数100万人分の労働時間を仮想ペットの飼育に費やさせたことに対して」。皮肉や風刺で授与されることもある。水爆の発明者でありスターウォーズ計画を提唱したエドワード・テラーは「一般とはまったく違った意味を『平和』に与えた業績を称えて」平和賞を贈られている
▼泣きやまない赤ちゃんを寝かしつける方法を理化学研究所などの国際チームが科学で解明したというニュースは、イグ・ノーベル賞狙いではなさそうだ。抱いて五分歩き、座って八分待ってからベッドに寝かせるといいという。厳密な時間は別にして、子を育てた親なら誰でも感じていることを、真面目に研究したとは言えそうか
▼その範囲でおさまらないケースがあるから育児ノイローゼにもなるのだ。大方の傾向をことさら解き明かすのではなく、うまくいかない一、二割を解明する方が〝子育て大賞〟の候補ぐらいにはなった。