<まる見えリポート>参院選・有権者「私の争点」 円安、原材料高への対応を

【参院選三重選挙区の各立候補者。訴えは有権者に届くか】

参院選は10日の投開票に向け、残すところ1週間となった。各候補者や政党は連日、1票でも支持を広げようと政策や名前の連呼に余念がない。一方で、有権者はこの選挙を通じて何を考え、政治に何を求めているのか。有権者の声を聞いた。

「円安が進み、資材価格が軒並み高騰している。個々で努力はするが、政治の場でも打開に動いてほしい」。こう話すのは鳥羽市浦村町でかき養殖業を営む浅尾大輔さん(43)。発砲スチロールやロープ、油代など細部にわたり資材が高騰。できる限り価格転嫁せずに続けていきたいが「ぎりぎりの瀬戸際に来ている」という。

すでに行政から原油代の負担軽減策などが示されているが、小手先めいた対応にも映る。「円安を止められないなら、逆に海産物の輸出を強化するといった円安の波に乗る方法もある。個人ではなかなか難しい海外での販路拡大など、政治にはもっと大きな視点で対応してほしい」と注文する。

浅尾さんはもともと大阪市出身で、14年前にこの地に移って養殖業を始めた。その中で感じてきたのは「既存の漁業システムに頼るだけでは持続可能な漁業を維持できないのではないか」ということだ。

漁業は担い手や後継者不足が深刻化し、漁村は過疎化が進む。「このままでは衰退する一方だ」と危機感を募らせる。

現状を変えていこうと、浅尾さんは仲間たちと一緒に新しい会社組織をつくり、養殖の効率化や販路拡大、新しい価値創造に取り組んでいる。

「例えば地球温暖化対策としてブルーカーボンを取り入れ、企業と漁業者の間でクレジット取り引きができれば漁村にお金が落ち、それが漁業の活性化につながる」と強調。「持続可能な地域、一次産業を維持するための抜本的な対策を打ち出してほしい」としている。

県男女共同参画センター所長を務めたこともある東員町の石垣弘美さん(65)は、政治の場への女性参画の推進を求める。

石垣さんは「女性だからすべていいという訳ではないが、今の政治はあまりにも当事者意識からかけ離れている」と指摘。「子育てや介護を経験している政治家がどれだけ存在するのか」と話し、多様な経験や意見を持つ政治家を増やす一端として、女性の政治参画の重要性を唱える。

石垣さんは女性の政治参画率が高い北欧を視察した際の光景を、今でもよく覚えているという。「国会議員がママチャリに乗って登庁していた。でも日本では黒塗りの車でしょ。それだけでも、いかに政治家が国民とかけ離れているかが分かる」と話す。

平成30年に施行された、選挙において男女の候補者数をできるかぎり均等にすることを目指す「政治分野における男女共同参画推進法」も期待倒れになっているとする。

遅々として進まない女性の政治の場への参画を進めるには「一定、強制的に配置することも必要だ」とも。クオーター制やフランスの男女の候補者数をほぼ同数にするパリテ法などの導入を検討すべきとしている。

熊野市木本町で染め物のTシャツなどを販売する「マリモTファクトリー」を経営する伊藤威さん(60)はコロナ禍で売り上げが激減するなどの打撃を受けた。「徐々に戻りつつあるが、まだまだ不安は拭えない」と話す。

特に来年、再来年以降、コロナ禍で受けた融資の返済が本格化することに不安を覚える同業者らも多いという。「回復もまだ途上のうえ、原材料価格の高騰など新たな問題も出てきた。厳しい状況が続いている」と述べ、継続的な支援策を求める。

その上で「コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻など想定を超える事態が次々と起こっているが、政治スキャンダルの追及が優先のように思える。もっと根本的な課題に向き合ってほしい」としている。