<まる見えリポート>更生の担い手、確保が課題 保護司が三重県内で減少傾向

刑務所からの仮出所者や保護観察付きの執行猶予を受けた人、少年院を仮退院した少年などと定期的に面談し、更生を支えている保護司。重要な役目を担っているが、三重県内では保護司の高齢化などで減少傾向が続き、担い手の確保が課題となっている。

保護司は、法務大臣から委嘱を受けた非常勤の国家公務員で、給与が支給されないボランティアだ。任期は2年で、再任も可能。保護観察のほか、刑務所や少年院を出所する前に、身元引受人の意思などを確認する「生活環境調整」も行っている。

津保護観察所によると、4月1日現在、県内では29市町の16保護区で、定員764人に対し、681人(充足率89・1%)が活動している。10年前の716人に比べ、35人少ない。

保護司を務めるには、保護司から推薦してもらう場合が最も多いという。だが、自身の仕事が多忙で時間的余裕がない、また、犯罪を犯した人と接するのが不安―などの理由から、断られることもあるという。

最近では、保護司の家族に配慮し、本来、保護司の自宅で行う面談を、更生保護サポートセンターで実施することも増えた。ベテランと新人の保護司が2人で面談する「複数担当制」も進めている。

津保護観察所の荻原直己企画調整課長は「犯罪が減ることは、地域の利益にもつながる。意欲のある方は保護司を希望してほしい」と話している。

津保護司会(津市)では115人が、非行をした人たちの立ち直りに協力。教師や警察官、刑務官を定年退職した人や自営業の傍ら活動する人などさまざまだ。

田上光治さん(74)は中学校教諭を定年後、前任の退任を受け、保護司を務めている。警戒心から初めは話をしてくれなかったり、約束をした日時に来なかったりする人もいて根気がいるというが「じっくり時間をかけて話を聞いていると、心を開いてくれる」と話す。

子どもたちが非行に走らないよう「居場所をつくる必要がある」と話し、「あかんことはあかんと、みんなが声をかけ合えるよう社会全体で考えなければいけない」と語気を強める。

30年にわたり保護司を務める同会の吉村哲夫会長(71)は「何年も担当していると、どんどん人間が変わってくるのが分かる」と言い、「親に代わって悩みを聞くというとおこがましいかもしれないが、親に言いにくいことでも言ってくれれば、対象者は立ち直ることができる」と話す。

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 保護司との出会いがきっかけで、自身も保護司になった人もいる。

昨年11月から保護司を務める県内の会社員男性(39)は、16歳のとき、シンナーを所持したことで保護観察処分となった。家庭に居場所がなく、高校受験にも失敗。「少年院に入れば楽になると思った」と振り返る。

約2年間、保護司の女性と面談を重ねた。初めは「決まりで会わなければならないのだろう」という感覚で、淡々と過ごしていたという。だが、自身の母親よりも10歳ほど年上の女性は、うるさく言うわけでもなく、熱心に話を聞いてくれた。「先生との出会いがなければ、今はなかった」と感謝している。

今でも、女性と定期的に会うなど、交流を続けている。男性はまだ、対象者を受け持っていないが、受け持ったときには「頭ごなしに言っても受け入れてもらえないと思う。話を聞くことを大事にしたい」と話している。