2022年4月23日(土)

▼侮辱罪を厳罰化する刑法改正案が衆院で審議入りした。立憲民主党は「公務員や政治家への正当な批判を萎縮させる」と別途「加害目的誹謗等罪」を新設する対案を提出して、同時に審議入りした

▼古川禎久法相は「処罰対象の行為は従来と変わらない」ので「表現の自由を脅かす」という政府案への批判は当たらないとしている。立民は「ネット上の誹謗中傷対策として的確ではない」として、侮辱罪には必要のない公共性や真実性などが認められる場合は罰しないことを提案している

▼政府案は、ネットで中傷を受けたプロレスラーが自ら命を絶ったことの再発防止が主眼で、立民案は、現状の侮辱罪の適用の問題点を踏まえている。昔、鈴鹿市長に「公開質問状」なる文書を送った団体代表が同市長から名誉毀損で告訴されたことがあった。検察が略式命令の受け入れを勧めたが拒絶して裁判になったが、検察は途中で侮辱罪に訴因変更して幕引きしてしまった

▼市長の政治姿勢を問う問題に単なる侮辱罪への変更はどうかと問われ、検察は軽い刑にしたのだから問題ないと答えた。JAの理事会で激論になったことがある。売り言葉に対し、買い言葉がいくぶん過激になって、侮辱罪として訴えられ、判決で認められた。市議会などでも、侮辱罪だなどの言葉が飛び交うことがある

▼侮辱罪は「バカ(アホ)じゃないの」などでも適用される可能性はある。厳罰化は、JA理事会や市町村議会の品のないやりとりを抑制する効果は知らぬが、確実に「公務員や政治家への正当な批判を萎縮させる」ことにはなるのである。