2022年3月24日(木)

▼三重とこわか国体・大会を語るのは不快だからもうやめようと何度思ったことか。そのたびに決意を鈍らせることが起きるのだが、また―。同国体・大会実行委員会の解散に当たり一見勝之知事が「両大会のレガシーを県政に生かしていく」。えっ、遺物ではなく、遺産?

▼似たようなものと言えなくはないが、県には北川県政の〝負の遺産〟という言葉がいまだ記憶に残る。県議会予算決算常任委で新年度予算案に反対した稲森稔尚委員の理由は「RDF(ごみ固形燃料)事業の総括が中途半端で納得できない」。RDFは北川県政の代表的な〝負の遺産〟だ

▼いずれにしろ、開催もしていない「両大会」の「遺産」とはどういうことか。レガシーという言葉を最も多用したのは鈴木英敬前知事だ。特に伊勢志摩サミットが開かれた平成28年、記者会見のたびに「サミットのレガシーとして」「経験をレガシーとして未来に繋げ」などと使った。とこわか国体・大会にも使っている

▼サミットのように「今後のスポーツ大会を支えるレガシーが残ってくれれば」「選手の育成とか様々な場面でレガシーもできてくる」といった具合。意味も遺産からやや変質して、後世に評価される業績の色合いが濃くなる。首相などが「レガシーを作る」と、大上段に構えた言い方をする類いだ

▼無から有を生み出す。あるいは有を生み出すかに見せる。多くは政権の終わりとともに露と消えていく。「両大会のレガシー」は語法として疑問だが、「無のレガシー」を県政に生かす知事の手腕を、まあ見てくれということかもしれない。