2022年3月25日(金)

▼「アリの一穴」は紀元前の中国の古書『韓非子』にある「千丈の堤も蟻の一穴より崩れる」を源流とすることわざで、大事は小事を放置することから起きるの意味。県立こころの医療センターが患者からの預かり金6万円を紛失した。小さな穴がたくさんあいている感がある

▼半年前には、患者の診療記録が相次いで漏洩していたことが発覚した。患者からの指摘がきっかけで製本の過程で誤ってとじたことが原因という。いまだに電子カルテが徹底していないことをうかがわせたが、再発防止には触れられなかった。今回の紛失は、預かり金禁止のルールを家族の意向で破った「たまたま」のケースという

▼保管していたナースステーションの金庫は、鍵は看護師長ら四人が管理し、前日施錠を忘れた可能性があるという。「たまたま」が重なったか。翌日気づいた時は現金は消えていた。再発防止策は複数で施錠を確認することと、1週間に一度は金庫内の保管状況を改めること

▼預かり金禁止のルールにも触れられていないようだが、「たまたま」の危険は今後も続くのかどうか。ナースステーション自体も当然施錠はされていようから、仮に盗難だとすると、二つの鍵がかけ忘れた時に生じた犯行になる。「たまたま」が三つ。「一穴」はいくつあるのだろうか

▼県立総合医療センターで診療報酬の不正請求が発覚したのは1年前。こういう「大事」にいずれなるというわけではないが、監査が甘く、まだ対応を決めらていないと議会から指摘されていた。病院は〝聖域〟という旧習は今も続いているのかもしれない。