2021年12月18日(土)

▼似たような問題に直面すると、国も地方も似た行動をとることを改めて思い知る。自殺した元近畿財務局職員の妻が起こした森友訴訟で、請求棄却を求めてきた国は一転、請求を認めて約1億円払い、裁判を終結したことだ

▼昔、怪文書をもとにした記事を書くなという筋違いな訴訟を本紙に起こしてきた元鈴鹿市長の場合は請求放棄だった。訴えの取り下げは相手の同意がいるが、請求放棄はいらない

▼訴訟は、まず仮処分の申請で始まり、「仮」ではなく本訴でこいと言ったら、そうしてきた。怪文書の中身によほど探られたくない痛い腹があるに違いない、裁判を通じて明らかにしていくと言ったら一転して請求放棄した。「ひきょう」という元職員の妻の言葉は当時の心境である

▼同市では、別に工事に関わる資格試験で替え玉受験のうわさがあった。業者認定は市なので責任者に取材したが、木で鼻をくくったような対応。市民から訴えられますよと嫌みを言ったが、どうぞどうぞと言わんばかり

▼訴えるのは市ではなくあなた個人だと言ったのは売り言葉に買い言葉の類いだが、途端責任者の態度が変わった。調べてみるというのである。森友訴訟では元職員の上司らが近く証人尋問の予定だったという。組織がもたないと思ったのかも知れない

▼退職した元国税庁長官相手の訴訟は別途続く。歌舞伎「菅原伝授手習鑑」で、主君菅原道真の子をかくまった武部源蔵が、代わりに自分の息子を差し出し「せまじきものは、宮仕えじゃなあ」と血を吐くようにうめく

▼元国税庁長官の心境に、ちょっと思いをはせた。