2021年10月26日(火)

▼コロナ禍に伴い、主軸の観光事業が大打撃を受け、駅前再開発事業は二転三転。大きな課題を抱えた伊勢市のこれから4年間のリーダーに、現職の鈴木健一氏が前回に続き無投票で4選された

▼目立った失策がなく、堅実な市政運営が評価された結果という。国の観光重点政策もひっくり返った中で、前回衆院選に命名された「国難突破」とは大違いの真の国難ではあったが、産業構造のぜい弱さは否めない。駅前再開発事業については「何とか成功させたいと考えている」。選挙戦になれば争点の一つになったであろうが、消化不良の感は拭えない

▼キーテナントが経済情勢悪化を理由に撤退。その穴埋めを、もうひとつのキーテナントである市の負担上乗せで賄おうとしたことが議会の反発を招き、鈴木市長は市の保健福祉拠点施設の入居に関する基本協定の締結断念を表明した

▼業者は体制を一新し、市の負担上乗せ案を撤回し、予定通りの入居を軸に再交渉を提案。市長は当選後、「(入居は)スケジュールを含め慎重に対応したい」。締結断念表明は、うやむやになってしまった気配。穴埋めの解決策もつまびらかではない。市が提案していた融資の活用が事業の将来を保証してくれるはずもない

▼4期目に向けて、鈴木市長は人口減少、防災、観光経済対策、情報通信技術の活用などを課題に挙げていたが、うち筆頭の人口減少対策は具体策が不透明で、衆院選の争点にもなっていない。コロナ後を巡り、国がどれほど力を入れてくるか。目立った失策がなく、堅実な市政運営という評価だけでは対応しきれない。