<まる見えリポート>丁寧な口調「信じてしまう」 還付金詐欺未遂体験語る

【県内の18署で貸し出しをしている自動通話録音警告機】

「医療費の払い戻しがあります」―。三重県四日市市の自宅に1人で住む80代女性の固定電話に、市職員を名乗る男から8月、電話があった。男の指示で現金自動預払機(ATM)へ行き、お金を振り込む直前、後方に並んでいた同市のパート高橋里美さん(56)に声を掛けてもらい、被害を免れた。女性は自分が特殊詐欺の被害に遭いそうになるとは思わなかったという。特殊詐欺の被害者を1人でも減らしたいと、体験を語ってくれた。

8月23日午後2時半ごろ、女性宅に四日市市役所職員を名乗る男から「医療費の払い戻しがある。払い戻しにはATMを利用するので、振込先の口座とATMの場所を教えてほしい」と電話があった。女性は「(男の)口調が丁寧で、信じてしまった」と振り返る。

女性はタクシーで商業施設のATMに向かった。男からは「印鑑と身分証明書を持参すること」、「ATMへ到着したら伝えていた番号に電話をかけてほしい」と指示されていた。女性は電話をかけると男の指示に従ってATMで操作を始めた。だがうまくいかず、カードが何度も戻ってきたという。

女性の行動を不審に思ったのが、2つ後ろに並んでいた高橋さんだった。高橋さんは「時間がかかっていて、電話で話をしながらだったので変だな」と感じたという。普段から高齢者と接する仕事をしており、話しかけることをためらわなかったといい、「お母さん、誰とお話しているの」と女性に声を掛けた。

女性から携帯電話を借りて電話を代わると、相手の男に「あなたは誰ですか」と尋ねた。すると、男は百五銀行員を名乗ったという。高橋さんは男の話の内容がおかしいと感じたため電話を切り、自身の携帯で警察に通報した。

特殊詐欺被害を防止したとして、四日市北署から高橋さんに感謝状が贈られた。高橋さんは「高齢者の方がATMで時間がかかっていたら、少し疑った方がいいのかな」と話した。

女性はその後、振り込め詐欺被害に遭わないよう、警察署から貸し出された「自動通話録音警告機」を電話機に付けたり、自宅に防犯装置を設置したりと対策をしている。

市外に住む女性の60代の長女は、家族間でできることとして「自宅に訪問者が来たり、電話がかかってきたりしたときの対策を母とシュミレーションしている」と語った。

県内では今年、還付金詐欺や架空料金請求詐欺などの特殊詐欺被害が89件(9月末現在)発生し、被害額は1億2840万円。前年同期比で12件減少、被害額も1億3640万円減った。だが、今月18日にも桑名市内の60代女性が還付金名目で約100万円をだまし取られており、特殊詐欺被害は止まらない。

県警生活安全企画課は「ATMで還付金が戻ることは絶対にない。県内の18署で貸し出しをしている自動通話録音警告機を電話に付けるなど、対策をしてほしい」と注意を呼び掛けている。