<まる見えリポート>最先端の介護現場へ 鈴鹿・ICTやロボット活用

【介護ロボットを操作し、ベッドから車いすへの高齢者の移動を介助する職員=鈴鹿市深溝町の鈴鹿グリーンホームで】

特別養護老人ホームなどを運営する三重県鈴鹿市深溝町の鈴鹿グリーンホーム(服部昭博施設長)で、ICT(情報通信技術)機器や介護ロボットを活用した最先端の介護現場づくりが進んでいる。

先進的な取り組みは9月の「東海北陸ブロック老人福祉施設研究大会 三重オンライン大会」で実践事例報告の一つとして動画配信されたほか、積極的な介護機器の導入による職員の負担軽減などが評価を受け、三重労働局の令和3年度安全衛生に係る優良事業場として「安全衛生努力賞」をこのほど受賞した。服部施設長(49)は「元々高齢者の割合が高い地域でもあり、現場では先進的というよりも、現状に合わせているという認識。鈴鹿の未来の姿として見てもらえれば」と話す。

市全体の65歳以上の高齢化率は6月末現在で25・4%。一方、同施設のある深伊沢地区は31・1%、近隣地区の庄内地区は38・3%、椿地区は33・8%など、いずれも市の平均を上回る。

高齢者数の増加を見据え、同施設は平成28年から介護ロボットの導入を始めた。現在は見守り支援ロボットや排泄予測ロボットなど9種類と、タブレットやインカムなどのICT機器を組み合わせて活用する。

例えば、見守り支援ロボットはベッドマットレスの下に設置し、高齢者の呼吸や脈拍、睡眠、覚醒、ベッド上での座位が職員の端末で確認できる。排泄ロボットは膀胱部に貼ることで、膀胱の尿量が職員の端末で確認でき、適切なタイミングでの排泄を支援する。

服部施設長は「これまでは職員が夜間の巡視で高齢者から『眠れない』と苦情を受けたり、経験値頼りでトイレ誘導し、互いに疲弊することもあったが、通知やデータのグラフ化で居室に入るタイミングや排泄のタイミングが的確につかめ、双方のストレス軽減につながっている」と話す。

令和2年度に入居者家族を対象に実施したアンケートでは、新たな技術を使用した介護について89・4%が肯定的な回答をした。

そのほか、介護・看護記録などをデジタル化し、インカムで職員間の業務連絡も情報共有することで仕事の効率化を図り、職員の働き方改革や人材不足の解消に効果を見せる。9月の令和3年度職員アンケートでは労働環境の満足度が82%となった。

介護士の方田太志さん(38)は「効率よく対応できるので心に余裕ができ、(高齢者と)しっかり向き合ってコミュニケーションをとる時間が増えた」と話す。

2月には県内初の非装着型移乗支援ロボット「サスケ」を導入。付属のハンモック状シートを使って、職員がロボットを操作することで、寝たきりの高齢者をベッドから車いすに安定した状態で移乗させることができる。

介助者と介助される側の体格差を気にすることなく、常に同じ力で安定した状態を保つことができるのは、ロボットならでは。職員の腰痛軽減にもなるし、高齢者も安心して身を任すことができる。

服部施設長は「単独でロボットを導入している施設はあるが、9種類も導入している施設はなかなかない。それぞれの機器を組み合わせて、独自のシステムを構築して活用していくスタイルは全国的にも珍しいのではないか」と話し、「テクノロジーの活用は利用者の生活が向上するための手段の一つ。今後も道を切り開いていく」と力を込めた。