2021年7月9日(金)

▼1期目の鈴木英敬知事の日本記者クラブでの講演に出席した共同通信社幹部が「将来の首相候補を見ようと」と社内向けにその理由を書いていた。そうなの、と他の幹部らに聞いたらみんな首をかしげたのはともかくとして、県内の報道機関の集まりで話題にしたら、そうなるためにはと言って選挙取材経験豊富という全国紙の支局長が話してくれた

▼人気や注目を浴びる政治家はいくらでもいる。問題はいかに持続させるかで、それができるかできないかで大成していくかどうかに分かれるという。知事の数多くの実績は実績として、そんな通説を意識しているのではないかという気にさせるのが、先の3選出馬までの経緯であり、今回の国政転出問題だ。実に気を持たせ、引っ張る

▼任期を全うするかと問われて「いいんじゃないですか」。「新たな動きがあれば県民や後援会の声を聞いて熟慮を重ねる」と言ったかと思うと、最近の動きを「いろんな声をいただいている。それも新たな動きと言えるかも」。「声」の内容は「予断を与えるといけない」と口を閉ざす

▼予断は腹いっぱい与えられている。まるで注目を持続させるには、いかに形を変えて予断を与え続けるかだと腹をくくっているかのようである。計算してか、天然か。美女が時折見せるシナにその他大勢が引き寄せられるのに似る。首相候補の資格十分と言えようか

▼策謀に無縁な武将は生き残れない戦国の世で、毛利元就は策士と呼ばれ、徳川家康は誠実な人とされた。天下人になれるかどうかの違いというのが歴史小説家、海音寺潮五郎史観である。