2021年2月14日(日)

▼東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長人事に「和魂洋才」の真髄を見る。日本古来の精神を堅持しながら、西洋からの優れた学問技術を摂取活用しようとすることだが、戦前は軍国主義、国粋主義の精神的支柱にもなった

▼辞任を決意した森喜朗会長は組織委幹部と連携しながら、元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏と面会し、後任を託した。受諾した川淵氏は森氏から「小池さん(百合子東京都知事)がえらく喜んでいたよ」と聞かされ、菅義偉首相や安倍晋三前首相の承諾を得たと説明されたと語った。新聞も、川淵氏就任は既成事実であるかのように報じた

▼女性蔑視発言はその瞬間、政治指導者やマスコミ、スポーツ界など関係者の頭から後退した。「コロナがどうあろうと五輪はやる」という〝和魂〟を貫くにはどんな〝洋才〟、すなわち手段、人選が一番かを森氏は熟知していたということであり、見事な手際だった

▼覆ったのは川淵氏が暴露したから。決定まで漏らすべからず、は人事のルールである。森氏への相談役要請など、軽率に過ぎた。輪を掛けて見事だったのは菅首相だろう。承諾しながらも「もっと若い人、女性はいないか」と言うのを忘れなかった。〝和魂〟を貫くためにどんな〝洋才〟が適任かを心得ているからだ。政界、スポーツ界、マスコミは一斉に女性会長に動き出した

▼女性蔑視は「あってはならぬこと」の大合唱の中でやはり後退するに違いない。森辞任で済む問題ではないと識者らは口をそろえる。その通りであり、各界リーダーらの言う「組織委の問題」でもない。